10276で「イカの気持ちが分かった」という脳科学者の話を紹介しましたが、ある対談集でそのことを自己分析していました。この体験のポイントは、彼がその中で語っていた次のような脳の構造にあるようです。
『心は知情意からなる、といわれますが、情が受け入れられ、脳活性が上がり、それによって知が働く』
(「愛は科学で解けるのか」新潮OH文庫より)
この「情が受け入れられる」というのは、いわゆる感謝の気持ちや肯定感で満たされた状態のことであり、松尾さんが例に出された「変性意識状態」を引き起こす「苦行」とは全く異なります。
ここで「自然との共認」という形で議論されているシャーマン的な能力とは、苦行から得られるマイナス捨象の回路ではなく、対象への限りなくポジティブな回路によって発揮されるものなのでしょう。おそらく、この2つは脳内で分泌される神経伝達物質の種類も異なると思われます。
このようなポジティブな意識状態が高まると、同時に極めて高い対象把握能力を脳が発揮し、人間同士はもちろん、樹木や作物の「気持ちが分かる」とか、「意識が同化した」という感覚をもたらすのではないでしょうか。
そこで発揮される対象把握能力が言語で説明できるレベルを超えたものだ(つまり言語自体が限界を持っている)と考えれば、それが単なる擬似感覚ではなく、後から科学的に検証しても正しいことが多いというシャーマニズムの不思議さも理解できるように思います。
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