少し前にここで議論になっていた人類の多地域vs単一起源説について、新しい記述を見つけたので報告します(既出でしたら済みません)。
『2001年1月、オーストラリア ナショナル大学(ANU)の研究者グループが、1974年にレークマンゴーで発見された約5万6千年前から6万8千年前のものと思われる人骨からミトコンドリアDNAを抽出することに成功したのだ。現在のところネアンデルタール人を含めDNAを抽出できた最も古い人骨になる。
ANUの人類学者アラン・ソーンによると、この人骨は完全に現代人の特徴を備えているにもかかわらず、そのDNAは他の地域で発見されたアフリカ起源の現代人とまったく関連性は見られないという。レークマンゴー人のすべての研究結果は、彼らがアフリカからやって来たのではない事を示すという。
このことは、現代人すべてがアフリカからやってきたのではなく、少なくともレークマンゴー人はアジアで進化を遂げた現代型ホモサピエンスであるということだ。
いっぽう、ミシガン大学の人類学者ミルフォード・ウォルポフも2001年1月発行のジャーナル・サイエンスの中で、現代人と古代人の頭蓋骨の比較検討結果から、現代人はアフリカ起源だけではなくアフリカ起源の現代人と地域ごとのホモエレクトスや古代型ホモサピエンスの間で混血を繰り返しながら進化した証拠が得られたとしている。
ウォルポフは、従来からカウスワンプ人の頭蓋骨は明らかに東南アジアのホモエレクトス・ジャワ原人の特徴を引き継いでおり、それらの特徴は現代のアボリジニにまで連続的に引き継がれていると強く主張している。』
(リンク「アボリジニ 進化の鍵を握る人々」)
オーストラリアの古代人には、比較的厚い頭蓋骨、発達した眼窩上隆起、後退した額に突出した顎部と大きな歯など古い人類の物とされる特長を多く備えた「カウスワンプ人」と、現代人に近い特徴を備えた「レークマンゴー人」の2種類がいて、現代のアボリジニはその混血により形成されたと考えられています。
ところが、「古い顔」のカウスワンプ人は1万3000年〜6500年前に存在していたのに対し、「新しい顔」のレークマンゴー人は6万年以上も前に遡れるという逆転が見られるそうです。その点でも、アフリカで進化した現代人が原始的な人々を駆逐して入れ替わったとする仮説は成り立ちませんが、今年レークマンゴー人のDNAが解析されたことで、遺伝的にもオーストラリアの古代人がアフリカ起源でないことが裏付けられたわけです。。
少なくとも、単一起源説に対してアボリジニという例外が存在することはほぼ間違いないようです。
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