> 人類は、農業革命、更には工業革命によって、より忙しく、かつより貧しくなったというわけである。(5402)
現在の環境問題や貧困問題の根本的な理由として、これら2つの生産様式の革命が挙げられる場合が多い。このような思考は、「人間の欲望は無限」という固定観念に基づいているが、1万年前の農業革命と、近代の工業革命とは本質的に異なるのではないかと思う。
> 人類は、やむをえず農業を始めた(同上)
農業は、ヤンガードリアス期の厳しい自然環境の中で、集団が生き延びるための工夫志向の結果生み出されたものだと思う。それに対して、工業革命は、それまでの封建制度を打破して、誰もがより多くの私権獲得の可能性に収束した市場拡大の過程で登場した。農業革命が自然外圧へのストレートな適応だったのに対して、工業革命の方は、自然外圧ではなく、専ら私権闘争という同類圧力の方が原動力になったと言える。
自然外圧は、人類にとっては絶対的なものであり、故に適応できれば(生存できれば)充足し、それ以上のものは求めない。一方、私権闘争の場合は、同じ人類個々人の間での「相対差」(優劣)が問題になるので、欠乏は無限大ということになる。
人間の欲望は無限という思考は、上記のように、場を支配する圧力が自然外圧から私権圧力に変ったことによって起こったのではないか。 |
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