古代社会
86842 エジプトとローマ帝国の類似性からみたピラミッド建設の意味
 
野田雄二 ( 43 営業 ) 05/03/05 PM11 【印刷用へ
以前から、塩野七生さんのローマ帝国シリーズを愛読しているのだが、多神教であること、女性の権限がまもられた婚姻制、公共施設の建設、異民族との同化に寛容であること等、エジプトと類似した面が多い。

ローマ帝国は、当初イタリアの一地方部族から出発している。伝説では狼に育てられた二子が建国の祖といわれている。

小国から出発したローマが世界帝国になるのだが、面白いのは、もともと共和制で、最高決定権者=執政官が毎年、元老院の選挙で選ばれていたことである。そして、イタリア統一の過程は、武力で服属させた部族も、奴隷にするのではなく、有力者を元老院の一員にして吸収していく方法である。

有名なシーザー(カエサル)は、当時のローマから見れば蛮族であるガリア地方(現在のフランス)を天才的な戦略で征服するのだが、やはり、奴隷にするのではなく、属州化して有力者にはローマ市民権と元老院の議席を与えている。

これは現代人から見た人権や平等などのイデオロギーによるものではなく、ローマ軍がローマ市民で構成されており、ローマ市民が増えると武力が高まるという拡大、強化の戦略をとったからだともいえる。世界的な私権闘争・武力闘争に勝ち残るための現実的な戦略だったのだ。

ローマが巨大化して、共和制から帝政に移行したのは、シーザー(カエサル)以降であるが、生涯権力を握ることになる皇帝も、建前上は市民から選ばれたという形を取っている。

そして、皇帝が力を独占できるのは、帝国の安全と食料をきちんと確保しているからであり、そのための街道の整備や、公共施設の建設に、歴代の皇帝は非常に力を入れている。

ここで、ピラミッドが何のために作られたのかの、一つの参考になるのが、ローマ皇帝も一生懸命公共施設を作ったことである。エジプトと違うローマの特徴は、街道や浴場、劇場など実用的な物が多く、神殿が少ないところであろうか。

ローマ皇帝といえども、神のような絶対権力者ではなく、大衆の支持が得られなければ、その地位が危うかった。実際、ローマ皇帝の多くは失政や権力争いが元で暗殺されており、天寿を全うした皇帝は少ない。帝政をスタートさせたシーザー(カエサル)が暗殺されているのが象徴的である。

私権統合国家といえども、人間の集団である以上、共認が不可欠であり、国家が大きくなるほど、その統合を担う権力者は、権力者であることの正当性を示す必要があったのである。

戦乱の時代には、戦争に勝つことが正当性の証であり、正当性は明らかである。しかし、平和な時代にはそれが非常に難しい。戦争に勝っている時代は、兵士に分け前を与えられるが、平和になると兵士にもうまみがなくなる。

王の力が偉大である事を示し、なおかつ、戦場がなくなってぶらぶらしている兵士にも活躍の場を与え、大衆の人気も得られる。それが王による公共事業が必要になった根本原因ではないだろうか。

それは、エジプトが共同体的だから実施されたのではなく、私権統合国家だから、王といえども油断をするといつ殺されるか分からないから、王権の正統性を示すために行われたのだともいえる。
 
 
 
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