日本における夜這い婚と一対婚の攻防
84817 夜這婚は何故弾圧されたか?
 
雪竹恭一 ( 38 営業 ) 05/01/29 PM07 【印刷用へ
一連の投稿を読み返してみると、日本においては、(庶民にまで一般化したという点では)、一対婚は明治以降法制化されたという、たかだか100年ちょっとの歴史しかなく、しかも、明治政府から強制されたものであるという歴史的事実が浮かび上がってきます。

政府の度重なる弾圧にも関わらず、農村部ではかなり最近(第二次大戦後しばらく)まで、夜這婚の風習が残存していたこと、現代では、一対婚制度はガタガタになって、すっかり形骸化してしまっていることを考えると、実は、一対婚制度は、決して日本に根付くことのなかった、西洋からの借り物の制度でしかなかったと総括できるのではないかと思います。

では、日本古来の婚姻習俗の伝統と相反しているにも関わらず、何故、近代化に伴って、一対婚が強制的に法制化され、日本古来の夜這婚は弾圧されてしまったのでしょうか?

>欧米列強に抗する「富国強兵・殖産興業政策」の為の「国民の知識向上と文化形成」の一貫である。

直接的には、当時の“進歩的”文化人や学者、政治家たちから、夜這婚は前近代的習俗と見なされ、近代化を推し進めるためには邪魔なモノという認識があったからという理由が大きかったのかも知れません。(もっと言えば、そのような前近代的な習俗が、“遅れているもの”“劣っているもの”と見なされたのは、“進歩的”統合階級の中に、西洋コンプレックスのような意識があったからかも知れません。)

しかし、より根底的に考えてみると、「一対婚制度は、近代国家にとっては、社会統合上の不可欠の制度であった」というような社会統合上の理由があったのではなかろうかと思います。

これは、仮説になってしまいますが、明治政府にとっては、欧米列強という外圧に対抗するためには、軍隊⇒産業⇒市場を拡大させる必要があり、そのためには、明治天皇を頂点とする国家の序列統合のもとに、村落共同体も再編する必要があるという判断が働いていたのではなかろうかと考えます。

夜這婚は集団婚であり、その大前提に村落共同体があります。そして、村落共同体が、村内での相互扶助的婚姻関係、生産関係で成り立っているある以上、村落共同体は、自己収束性をもち、自給自足を基本とする自己完結的な社会となるという基本構造を持っています。しかし、そのような構造が、近代化にとっては邪魔だったのではないでしょうか。明治政府にとっては、人々が村落共同体の中で自己収束していたのでは、村民は新政府の言うことを聞こうとしないでしょうし、富国強兵のための徴兵や、殖産興業のための労働力の確保もままなりません。

実際、明治政府が最初にやったことは、大政奉還から廃藩置県という、社会統合機構の大改革です。江戸時代の幕藩体制が、藩の自治性をかなり残存させた、ゆるやかな連合国家という色彩が強かったのに比べると、明治新政府のもとに、一元的に序列統合するという色彩は強まっています。そのような一元的序列統合を末端にまで貫徹するためには、村落共同体の自治性=自己収束性は邪魔なものであったというわけです。

つまり、欧米列強の外圧への対抗⇒富国強兵・殖産興業⇒市場拡大⇒一元的序列統合国家への再編の必要⇒村落共同体の自己収束性が邪魔⇒夜這婚の弾圧⇒一対婚の強制という形で、明治政府の政策判断はつながっていたのではなかろうか?と考えます。

当時の統合階級が、どこまで深く認識していたかは推測の域を出ませんが、日本における一対婚制度は、急速な近代化のために国家によって必要とされたものにすぎず、木に竹を継いだような制度でしかなかったというような視点は不可欠なのではないかと思います。
 
  この記事は 84435 に対する返信です。
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_84817

 この記事に対する返信とトラックバック
227783 「国家神道」と言う観念教育を利用した、明治政府による「婚姻法」の強制 西谷文宏 10/03/07 AM06
89314 共認原理に則った婚姻制度 長谷川文 05/04/21 PM11
85630 一対婚移行の要因 下城浩一 05/02/13 PM01

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 滅  亡
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
私権社会の打破のために
遺伝子の共同体
「利己的な遺伝子」を切開する 1
「利己的な遺伝子」を切開する 2
実現論の形成過程
闘争と生殖の包摂@
闘争と生殖の包摂A
自我が邪魔をして心を開けないセックス
近代思想の結果が、現代
転換期の女たち
夜這い婚
漱石をねじ曲げる「奴隷」たちへ
「自我=エゴ」を制御するもの
相手尊重の意識の原点は?
規範意識の形成の土台は? 
大転換期の予感と事実の追求
現代の神官=社会統合階級の欺瞞
個人主義者の詭弁 個人と自我
個人主義の責任捨象と言い逃れ
現状の経済システムに問題あり

『るいネット』は、35年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp