性・家族・若者
772 夜這い婚
 
矢野聡子 ( 29 営業 ) 01/03/03 PM11 【印刷用へ
「夜這い」の起源、あるいは全国でここまで広く行われていた理由については、諸説があります。

ひとつは、集団婚、妻問婚の名残とみる説です。
集団婚という婚姻形態は、ひとことで言えば複数の男と女がグループで婚姻関係を結ぶもので、日本を含めて採取時代から歴史的に長く行われていたかたちです。
また、妻問婚とは、男が女性のもとへ通う婚姻形を指しています。
この場合、語源についても「夜這い」→ヨバフ、ヨブ(男を「呼ぶ」)と解されているようです。
高群逸枝などが、こちらの説に依っています。

もうひとつは、近世郷村の農村社会に固有の様式、とみる立場です。赤松啓介はどちらかというとこっちに近い。つまり夜這いは、ムラの置かれた現実の状況(特に経済状況)に対して、村落共同体という自治集団を維持していくための実質的な婚姻制度、もしくは性的規範であるとする見方です。

ちなみに赤松は、「夜這い」を二つの類型に分類しています。

「総当り型」
若者に加え、既婚者も夜這いの参加を認める型(後家や女中、子守ももちろん含む)。20〜30戸の小字が多い。

この型のなかでも、女房持ちは他人の女房を、若衆は娘をというように分化しているムラと、特に区別をしない文字通りの総当りであったムラとがあるようです。ただしさすがに、他人の女房に夜這いするのは、主人が留守のときに限られるそうです。


「若衆型」
若衆仲間にのみ夜這いの権限が公認され、対象は同世代の娘仲間(+後家)に限られる型。ムラの戸数は相対的に多く、若衆と娘の員数が均衡していることが多い。

この型のなかでも、基本的に全ての若衆と寝るやりかたと、ある程度の選別ができるムラとがあったようです。また1年ごとにくじ引きで相手を決める方式を採用する例もあります。
総当り型に比べ様式化されたかたちと言えると思います。
この場合、嫁をもらうと基本的には、夜這いは卒業ということになります。


「総当り型」となるか「若衆型」となるかは、ムラの規模にもよりますが、そのムラの置かれた現実の経済状況による面が大きいようです。

いずれにしても表向きは(一応)一夫一婦制ですが、実態的にはその制度は解体され、代わりに皆が性的満足を得られるシステムで補完されていた、と見ることができるのではないかと思います。そしてそのようなシステム=「夜這い」は村落共同体を維持するために必要不可欠であったがために、全国で普遍的に行われるようになったのだろうと思います。
 
 
 
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_772

 この記事に対する返信とトラックバック
245092 夜這いは『性の組織論』! かつまた 11/02/03 AM11
夜這い婚 〜日本人の集団性を育んだ婚姻制度〜 「共同体社会と人類婚姻史」 11/01/05 AM02
日本婚姻史2〜その1:夜這い婚とは? 「共同体社会と人類婚姻史」 10/04/07 PM00
夜這いは村落共同体の活力維持と、男女の人口比率の調整機能を果たしていた。 「共同体社会と人類婚姻史」 07/06/12 PM10
150601 他の社会の婚姻制度について 黒嶋 07/04/29 PM07
夜這い婚って、何?パート2〜性はみんなで共有☆されていた〜 「イマドキの男女事情!?」 07/01/11 AM10
“娘よろこぶ 金のかんざし”とは?? 「イマドキの男女事情!?」 06/09/15 AM07
112667 夜這い婚の形態が多様なのはなんで? KOU 06/05/10 PM06
110697 そのとき女性は? 匿名希望 06/04/29 PM02
107565 私有婚の浸透に伴う、集団婚から夜這い婚への変遷 松尾茂実 06/03/17 PM11
100477 夜這いから学ぶ 宮崎未帆 05/11/06 PM11
100055 戦国時代の戦争圧力に適応するために夜這い婚となった 冨田彰男 05/10/30 PM03
89708 夜這いってすごいシステム 嶺山志保 05/04/28 PM10
82897 夜這い婚の類型 井上緑 04/12/20 PM10

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp