否定脳(旧観念)からの脱却
53170 群れるメリット
 
蘆原健吾 ( 30代前半 出版 ) 03/04/15 PM11 【印刷用へ
msg:38933 「適応の位相」で以前、人類の適応における群れの重要性を書いたことがありました。

進化史的にみて「群れ」を形成するメリットは何だったのでしょうか。

かなり素朴に生きている生物群でも、群れでいる方がより適応に有利である事例が多いようです。

キンギョやウズムシなどの水生動物は、水中に有害物質が入ったときには、一匹でいるより群れでいる方が耐性が高いことが知られています。自分達の代謝排出物により、有害物質を無毒化する効率が高まるかららしいです。

ネズミなどの小型哺乳類は、寒いところでは固まりあうことで、生き抜きます。お互いの身体が熱源になるわけです。

ヘビでも、一匹でいるより数個体が固まっている時の方が代謝が低下し、酸素消費量が少なることが知られています。

鳥やサルなど群れでいる生物では、ある一匹が敵を見つけて声を上げることで、群れ全体が敵に気づくことによって被害を最小限にするという行動様式が、よく観察されます。

群れで密集して固まっていると、肉食動物が近づけない、というメリットもあります。例えばジャコウウシでは、捕食者が近づいてくると体の大きなオスが群れの周りを取り囲んで、敵を寄せ付けない隊形をとります。なので、肉食動物は、たいてい、群れから離れた個体のみを徹底的に狙い撃ちにする作戦をとります。

群れでいると、生殖のチャンスが増え、安定して子孫を残すことができます。また、群れの個体が様々な組み合わせで生殖の機会を持つことができれば、群れの中の個体の多様性が保たれ、外圧(急な環境変化)や病原体に対して耐性(生き残る確率)が高くなります。
(参考:W.エトキン『動物の社会行動−魚からヒトまで−』思索社1980年)

ニホンザルの群れは、数匹から数十匹までさまざまですが、一般にその中心にはボス猿と全てのメス・赤ん坊、2歳までの子猿で占められています。その周りに4歳以上のオスが取り囲み”周縁部”を形成しています。2歳から4歳までのオスは、母猿のいる中心部と周縁部との間をいったりきたりするそうです。メスや子供が守られる、実に適応上有利な陣形です。

さらに、ニホンザルの間には、性別、年齢能力差などから、明確な順位関係が形成されています。その上下関係は非常に厳格なものです。群れの中心にいることができるのはボスのみで、No.2でさえそこに居座ろうとすればメスたちに非難されます。また、群れの正規メンバーではない”ハナレザル”は、実際には強かろうとも、群れに属している子猿にさえ遠慮しながら暮らしています。(参考:宮地伝三郎『動物社会−人間社会への道標−』筑摩書房1987年)

このような序列共認・規範共認・役割共認も、群れ全体を適応させるのに、実に見事に機能していますね。


こうしてみていくと、より複雑な社会構造を持つ生物ほど、群れをなすことのメリットが増大していることがわかります。


しかし、現代社会では、群れることの重要性が、あまり強調されていない。どちらかというと、「主体性が無い」とか「自分がない」とか言われて疎んじられたり軽視されたりしているような気がしてなりません。「個人主義」「個性重視」「アイデンティティーの確立」「自己実現」などの中身がよくわからない倒錯的な観念ばかりがまつり上げられいます。親の世代が押し付けるそれらの倒錯観念が、精神のおかしな子供たちが増えてきた大きな原因の一つではないかと思えてしかたありません。

人間は、群れようとします。ほとんど本能的に群れを求めます。群れで生きることは、人類にとって当然であり、事実そのようにしてしか人格は形成されません(その事実をあくまで否定し「個人」や「自分」に依拠する方は、生まれたての赤ん坊が一人で生きていけるか実験してみるといい)。それを、観念の先っぽで欠乏を封鎖し、誤った方向に導いているのが、上記の観念群です。

「人間は群れる」。そのあたりまえの事実を認め、近代までに形成された倒錯観念を払拭する必要性を、つくづく感じます。
 
 
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