古代社会
43122 インダスの都市住民は農閑期の農民ではないか
 
岡本誠 ( 49 経営管理 ) 02/10/30 AM01 【印刷用へ
 インダスの都市住民(モヘンジョダロの往時は4万人と試算されている)が専業なら、彼らに食料を供給できるだけの農業人口は少なくとも10倍以上は必要と考えられます。そのような社会が前2600年〜前1800年頃に存在したこと自体が謎でしたが、都市住民の大部分は農民自身であるとすれば、都市住民vs農民という大規模な階級区分はなくなります(一部の神官や役人は一旦除外して考えています)。

 都市住民の大部分を占める、工芸品などの原料採掘・運搬・作製に携わっていた工人は、インダス川が氾濫して農作業ができない農閑期に、平原の各地から集まってきた農民であった可能性が高いと思われます。

 インダス川は、春から夏にかけてヒマラヤの雪解け水とモンスーン気候の多雨によって氾濫し、それが収まる(乾期になる)夏期以降種を蒔き、冬に刈り入れます。従って、春から夏にかけての氾濫期は、農民は暇でやることがありません。牧畜に携わっているメンバー以外は、都市に集まって工芸品などを作製したと考えられます。

 ヒントは、エジプトのピラミッドを建設したのが、農閑期の農民だったことです。ナイル川は、エチオピアの水源地帯が雨期になることによって、7〜10月が増水期、11〜2月が播種期、3〜6月が収穫期となります。暦は異なりますが、増水時期には何もすることがなく暇である点は、インダスと共通します。そこでエジプトでは、王が農民を全国から“雇用”して(衣食住を保証して)ピラミッドを建設したとされています。建設に駆り出された農民の墓や人骨(成人男性と同数の女性人骨や子供の骨も発見されているので家族で暮らしていたらしい)、“雇用契約”を示す碑文なども発見されており、確かだと考えられます。

 残された問題は、インダス文明やエジプト文明が、異民族の掠奪を経ていないのに、何故広域の農耕部族を統合する階級(神官や王や役人)が都市に存在し、税のような形で農産物等を集約し(つまり余剰生産物を徴収し)、工芸品作製やピラミッドを建設したのか(できたのか)、ということでしょう。

 一見私権社会に見えますが、メソポタミアのように掠奪→武力支配の結果形成されたのではない、従って共同体(に近い)部族で社会は形成されているところが、大きな特徴と考えていいだろうと思います。

 考古学資料が豊富で、解明がより進んでいるエジプトから入った方がいいだろうと考えています。
 
 
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