生物学を切開する
37739 分子時計の根拠は?
 
蘆原健吾 ( 30代前半 広報 ) 02/08/11 AM00 【印刷用へ
おもしろい仮説だと思います。>北村さん

>哺乳類においては初期に分岐した齧歯類(ねずみ等)は塩基置換の速度が生物平均より高く、それに対してサルは遅くなっているというデータです。さらにサルの中でも分岐時期が早いものについては速度は平均値の3分の2、新しい物については2分の1以下にまで速度が落ちているようです。つまりこれはサルは進化するほど、塩基置換速度が際立って落ちているということを意味します。(北村さん)

まず、どうもこの部分の内容がよく分からなかったので、同じく、瀬戸口烈司氏の'96年の7〜9月にNHK人間大学「人類のルーツを探る」という番組のテキストを参考にして基本に戻って捉え直してみました。

msg:12221 msg:12222 「ミトコンドリアDNA解析による進化系統樹の適用範囲は?@〜A」において、分子時計の基本的な原理について書いたことがあります。

もともと、分子時計の概念は、一九六〇年、E・ズッカーカンドルとL・ポーリングという学者が、比較した生物間のある機能的タンパク質(ポリペプチド)で観察されるアミノ酸の置換数と、化石から推測されていた生物の分岐年代との間に相関性があることを見出したことから、それを応用して出てきた仮説です。

彼らの研究の「アミノ酸の置換」を、「DNAの塩基の置換」というさらにミクロのレベルで行える様になり('80年代)、現存する生物のDNAを調べることで、分岐年代を推測する手法として用いられたため、分子時計は一躍脚光を浴びたわけです。

国立遺伝学研究所のページでは、ミトコンドリアDNAの解析により、このような系統樹を描いています。
リンク

ヒトとチンパンジーの分岐は、研究者の間でも世間でも関心が高かったので、様々な分子で研究され、そこで確認された値がほとんど一致したので、ほぼ正しいと推測されています。しかし…

確かに、地質年代を測定する様々な手法と化石や地層での分析により、何十にもチェックされているらしいのですが、これらも全て「分子変化率一定」の仮説の上での計算であって、本来ならその分子変化率が一定かどうかを別に立証しなくてはならない。

ところが分子時計の研究者は「複数の手法を用いてチェックされたのだから分子時計は正しい、と錯覚している」、と瀬戸口氏は批判しています。自分たちが立てた仮説の枠内で計算してその計算があったことでそれを正しいと納得するというのは、なんだかなぁと思いますが。

しかも、類人猿でない他の動物群でも、その速度は本当に一定と言えるのか?北村さんのおっしゃるように、かなり異なるという報告もあるようです。

瀬戸口氏は、塩基置換が 統計学で言う「ポアソン分布」と一致しないことを指摘し、

>分子変化速度が一定していない分子変化に、「変化速度一定」の仮説をあてはめる分子時計は、そもそも科学的根拠に乏しいのである。

と結論しています。

実際に、霊長類よりも豊富な化石や研究対象があるゲッ歯類では、分子時計から推測された分岐年代と、古生物学的な推定とは大きく食い違っています。

国立遺伝学研究所をはじめ、様々な科学機関では、分子時計は既に事実であるような論調で研究発表がなされているのですが…分子時計…ますます怪しいですね。
 
 
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