マスコミに支配される社会
36931 「芸術」は私権の共認が生んだ観念の一つ
 
阪本剛 HP ( 28 SE ) 02/07/27 AM03 【印刷用へ
> しかし、市場社会では、商人階級の(コンプレックスの裏返しとしての)社会的評価をたかめる手段として「文化」が用いられた。
> だから、「芸術」は商人階級というパトロンの思惑の下で発達してきた。パトロンなしには発達できなかったと言ってもいい。

 この「芸術」という概念はいつ生まれたのでしょうか?

◆「オリジナリティ」や「創造性」は自然や神にしかない

 もともと「芸術」(art、ars)という言葉には、「技術」という意味しかありませんでした。
 大きく捉えても「芸事」「おけいこ事」くらいで、要するにその修練が大事だったのです。

 「芸術」には、ことさら「オリジナリティ」「創造性」が強調、重要視されていますが、「オリジナリティ」(originality)の元の言葉である「origin」=「万物の源泉」の資格や、物事を「創造」(creation)する能力は、神や自然のものであって、人間には絶対認められていませんでした。

 また「芸術」(art、ars)ということに必要とされていたのは、自然をまねること=学ぶこと、過去の優れた達人をまねること=学ぶことであって、ひたすら優れたものを模倣することが尊ばれていたのです。

◆「所有権」の絶対視が人間を創造主に仕立てた

 では、いつ現代的な意味での作者の個性を重視する「芸術」の概念が生まれたのかといえば、それは18世紀のことです。

 この頃、重農主義によって、自分が畑を耕してその作物が市場での富を生み出すことが広く行き渡ります。
 そして、富の源泉は、自分の労働にあって、その成果である富は、自分の所有物であるという所有権の観念が発達しました。 

 それまで、富を生む「もと」は、「自分以外」の何か、誰かにあって、決して自分ではなかったのです。
 
 所有権が万物に認められるようになると、それまでは一つの技術でしかなかった「芸術」の概念が転換します。
 つまり、自分の芸術作品の源泉=オリジナリティーや、創造性の在処=「所有者」としての自分の個性ということが絶対視されるようになり、「芸術」の概念自体も何事からも束縛されない=自立した絶対的概念へと変化していったのです。

◆原始・古代の「芸術」は錯覚でしかない

 かくして、万物の源泉、創造主としての資格を持っていた自然や神の座に、個人が収まることになりました。
 しかし、この個人のオリジナリティや創造性は、人工的に作られた、ごく新しい概念です。

 例えば、「原始・古代にも芸術があった」という見方はたかだかこの200年間の間に生まれた観念を過去の歴史に当てはめた錯覚にすぎません。
 なぜなら、原始の人類の生み出した傑作群には、オリジナリティや個性、ましてや所有権の絶対視はなく、ただ万物の創造主、源泉としての自然への畏敬の念があるのみであって、決して近代の「芸術」概念とは相容れないからです。

 
 
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