私権原理から共認原理への大転換
345617 イタリアのベーシックインカム(市民所得)がついに開始された。
 
野田雄二 ( 57 営業 ) 19/05/04 PM00 【印刷用へ
イタリアのベーシックインカム=最低所得補償制度である『市民所得』ですが、いよいよ実行に移されているようです。以前から注目していたのですが、報道量が圧倒的に少なく、また、導入後間もないこともあって効果のほどは、まだ明らかではありません。

ベーシックインカムは、市場原理=自由競争と相いれないだけではなく、市場原理の根本である私権統合(私権を獲得するために万人が相争う社会原理)を無効にする可能性を秘めており、一部の人は注目していますが、市場原理の社会での勝ち組=グローバリストには脅威となるシステムであり、マスコミや経済学者、政治家は否定的なとらえ方が多く、マスコミもできるだけ報道しないか、悪い方向で報道するという基本スタンスのようです。

一方で、これまでに報道されている内容を見ると、イタリアの市民所得制度は様々な制約があり、それが原因で普及が遅れている可能性もありそうです。現状のイタリアの市民所得制度について整理してみました。

■導入の経緯
・2018年3月4日イタリアの政党、M5S(五つ星運動)が国会総選挙で、反EU、ベーシックインカム(市民所得)導入等を公約に掲げ、EU肯定派の与党を破り第1党に躍進。
・2018年6月1日に最大勢力である同盟と連立政権を樹立。
・ベーシックインカム(市民所得)導入による財政負担の増大を理由にEUの猛反対にあうものの、3か月に及ぶ協議を経て12月19日に欧州連合(EU)の欧州委員会がイタリアの予算案を承認(国家予算もEUの承認が必要なんですね)。
・2018年12月29日、ベーシックインカム(市民所得)を含むイタリアの予算案が国会承認。
・2019年1月28日イタリアのマッタレッラ大統領はベーシックインカム(市民所得)を含む年金改革に関する法案に署名
・2019年2月初旬、市民所得のサイトがオープン
・2019年3月6日、市民所得の受付開始
・2019年4月頃、受給開始。

■制度の概要
・イタリア人で10年以上イタリアに滞在している低所得者(世帯年収9,360ユーロ以下)や失業者に対して、毎月最大780ユーロの補助金を受け取れる。
・いつでも働ける事、並びに毎週8時間の地域活動、並びにジョブトレーニング後に3つの仕事のオファーを受ける事が前提。
・3つの仕事のうち1つでも仕事を受けないと、2年後に「市民の所得」を受け取る権利がなくなる。
・「市民の所得」を悪用した場合は、6年間の禁固刑。
・「市民の所得」サイトを通じて政府に申請し、4月頃に収入カード(Income Card)を受け取る。カードは、チャージ方式のプリペイドカードになっており、買い物等に利用できる。
・事業主は、「市民の所得」サイトを通じて、低所得者や失業者に期間の定めがないフルタイムの仕事をオファーする事が可能。

■制度の制約・課題等
@新しいベーシックインカム方式とされているが、実際は、日本の失業保険の仕組みにいくつか前提条件を付して受給期間を制限しない事と、低賃金で働いている方に対して差額分を支給する方法。
A両親と同居していたり、持ち家がある場合は減額
B家電量販店や煙草屋では使えない(家電を安く買う権利も、煙草を吸う権利も、通常、煙草屋で販売されるロト)を試す権利も認められない。
C外国人に関しては、滞在許可証を取得して5年以上が経つ長期滞在者のみ。
D不正防止のため、個々の受給者の消費を逐一モニタリング。膨大な数の人々の消費を、国家、地方自治体が管理するキャパシティを持っているか。
※A〜Cは2018年10月19日の記事の引用のため、最新の制度と違う可能性があります。

色々と課題もありますが、五つ星運動の創始者でお笑い芸人の、ジョゼッペ・グリッロは2019年4月15日に来日した際に「五つ星運動にとって譲れない政策は何か」と問われ次のように語っています。「ベーシックインカムだ。導入されれば働き方や職業観が変わる。仕事と個人の生活の関係や、消費や財政などに革命的な変化をもたらす」
「市民所得」は、全ての国民に一定額を保証する制度にはまだなっていないが、ベーシックインカムの第一段階と位置付けられている。

以下参考サイト。
2019年01月30日イタリア、年金受給年齢を引き下げ 最低所得保障は1人当たり780ユーロリンク
2019年02月06日イタリアで「市民の所得」サイトが公開リンク
2019年03月08日伊政府、「市民所得」の申請受け付け開始リンク
2019年04月20日イタリア政治を変えたお笑い芸人が来日 「日本人は働きすぎ」「ネットで連携せよ」と毒舌発揮リンク
2018年10月19日:『同盟』『五つ星運動』イタリア第3共和国、忍び寄るファシズムの悪夢 リンク
 
 
 
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2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
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