世界各国の状況
343032 NHKスペシャル「アメリカVS中国・未来の覇権争いが始まった」を観て
 
山澤貴志 ( 53 ITコンサル ) 19/02/02 PM08 【印刷用へ
リンク を観ての気付きを述べたい。

1. 中国はアメリカとの先端技術における覇権闘争に本気で取り組んでいる。それが習近平国家主席のもと推進されている「中国製造2025」であり、その先兵が「海亀」。海外への留学や海外企業に就職して先端技術をアメリカから中国に持ち帰る中国人エンジニアたちに付けられた名前だ。

2. もちろん、産業スパイ行為を働いて捕まった中国人も多数だが、知的財産権に抵触しない範囲であっても、グーグルやテスラといったアメリカ先端企業に就職して得た経験は、彼ら「海亀」の血肉となり最終的に中国へと還元されていく。そして中国に戻った「海亀」たちは政府の資金援助の下、どんどんベンチャー企業を立ち上げ、優れた技術には惜しみない投資が注がれる。中国が先端技術に投資するのは、それが軍事と直結しているからだ。実際、ファーウェイにしろ、アリババにしろ、中国の人民解放軍とのパイプは太い。しかも中国マネーの投資先は中国人に限らない。アメリカ人のベンチャーに対してもアメリカのベンチャーキャピタル以上の投資を行い、最終的には優秀な人材は、中国での事業拡大を薦める。

3. 対して、アメリカのベンチャーは優位な資金援助があれば、中国への移住を厭わない。それどころか国家への忠誠心が希薄で、グローバリズムに否定的でないアメリカのITベンチャーたちは、中国への技術漏洩に警告を鳴らすアメリカの諜報機関や軍部の助言に耳を傾けようともしない。(ちなみにこうした傾向は、日本における経済界の動きとも重なる。トヨタetcの産業界は、技術漏洩のリスク、反日教育による暴動リスク、役人たちによる贈収賄リスクがあっても、中国の巨大な消費市場への参入という誘惑に負け、親中的判断を優先していく。)


4. 先端技術競争が影響を与え始めているのは軍事競争だけではない。先端の金融IT技術、ブロックチェーン技術によって、中国は銀行を介さない決済を世界に広めつつある。そしてこの中国の最新金融システムを歓迎しているのが、中国からヨーロッパへと連なる一帯一路戦略の鍵を握る中央アジアの国々だ。特に産油国のカザフスタンは石油支配=ドル支配による価格変動に左右されない決済方式を模索しており、中国が提案するブロックチェーン技術による決済に前向きだ。番組に登場する石油開発業者によると、ポーランドの大統領も「この決済を支援したいと言っている」らしい。

5. こうした先端技術流出に危機感を抱いたアメリカの国家主義者たちが、仕掛けたのが知的財産権訴訟であったり、ファーウェイ事件であり、そのための口実がイランや北朝鮮への経済制裁であろう。が、グローバリストとナショナリストの構造的な対立を抱えるアメリカに対して、中国は、IT技術が民間技術、軍事技術、金融技術の鍵を握ると考え、国家主導で、「海亀」を育て「ベンチャー企業」を育てている。加えて妥当アメリカ支配という旗印の下、周辺国を味方につけつつある。結果、民間技術、軍事技術、金融技術のいずれにおいても、アメリカを凌駕しつつある。

6. 「モノマネ」と揶揄されてきた中国だが、それはかつて、自動車産業の基礎をアメリカに学び、主導権を奪っていった日本にも言えることだ。問題は「モノマネは是か非か」などという次元にはなく、最終的にどちらがより優れたものを提供できるかだ。実際、市場経済においても後発企業が先行する本家企業を追い抜いていった事例はたくさんある(Exアップル社とマイクロソフト社)。民主国家=アメリカが忌み嫌う一党独裁国家=中国だが、世論の分断が続く限り、アメリカに勝ち目はないのではないだろうか。もちろん、中国が切り開く未来がバラ色だとはとても思えないのだが。
 
 
  この記事は 342174 に対する返信です。
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_343032

 この記事に対する返信とトラックバック
343899 欧米の植民地支配と大企業支配が、中国・ロシアの国家主義に敗れえる時代へ 村上祥典 19/03/07 PM08

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
ミス大爆発⇒警戒心発の集中力はガタガタ⇒共認圧力発の集中力を形成するには?
トラブルの根底に指揮系統あり。全てをネットへ
隠蔽・言い訳・誤魔化しの横行によって崩壊する私権体制
活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること
今後10年間は充足⇒活力を上げれば勝てる 
新卒者向けセミナー「経営者が語る」〜これからの時代企業が生き残っていくのに必要な力は何か(前半)
新卒者向けセミナー「経営者が語る」〜これからの時代、企業が生き残っていくのに必要な力は何か(後半)
自主管理への招待(1)工業生産から意識生産へ。時代は今、歴史的な生産力の転換を遂げようとしている。
自主管理への招待(2) 社会は、生産力の転換によってしか根底的な変革を遂げることはできない
自主管理への招待(3) 生産から離脱させ、消費へと逃避させるだけの近代思想
自主管理への招待(4) 「頭の中だけの自己」から「実現対象」への追求ベクトルの転換
自主管理への招待(5) 否定し要求するだけの「閉塞の哲学」から、実現対象を獲得した「解放の哲学」へ
自主管理への招待(6) 実現思考とは何か
自主管理への招待(7) 労働の解放のために:自主管理の原則
学生に与う1 いま、社会の基底部で何が起きているのか
学生に与う2 私権の終焉と市場の縮小と権力の暴走
学生に与う3 新しい活力源は、周りの期待に応える充足
学生に与う4 先行して共同体を実現した類グループ
学生に与う5 共同体の母胎は女性が生み出す充足空間
学生に与う6 この行き詰った社会をどう再生するか
供給発のカギは、ゼロから新しい供給者を育成してゆく仕組み
新概念を使いこなせて、はじめて供給者になれる
「観念力を鍛えるには?」(1) 話し言葉と書き言葉の断層はどこから登場したのか?
「観念力を鍛えるには?」(3) 「理解する」とはどういうことか?
「日本人はいつ物を考え出すのか?」(2) 学習観念が役に立たないのはなぜか?
出来ない、覚えられない
「みんなの成功体験」ならいくらでも積める
対面会議の欠陥
民主主義=会議という固定観念
集団統合の新たな仕組み:対面会議を超えて、全てをネットへ
企業革命の切り札は、社内ネット
経営者への提言:会議から社内ネットへ
行動方針4 まず身近な職場を改革してから、社会をどうするかを提示せよ
新時代を開くのは、共同体企業のネットワーク
共同体企業のネットワークをどう構築してゆくか
『類グループが勝ち続ける理由』〜まとめ〜
協同組合法:出資・経営・労働を一体化した働き方をしている人たちは10万人を越えている
「人口減少社会の衝撃!!これからの働き方はどう変わる?」〜今、なぜ労働法について考えるのか?〜
感謝の心を損なう「有給制度」に代わる、『有給休暇一括買取方式』

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp