小飼 弾さん(プログラマー・投資家) へのインタビュー記事です。
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小飼さんは、1969年生まれ。1999年にはオン・ザ・エッジ(現ライブドア)のCTO(取締役最高技術責任者)も務めています。
「時代の変化は、物があまり出した1969年頃にある」という状況認識をお持ちで、『働かざるもの、飢えるべからず。』というタイトルの著書を出版し、その中で国民の最低限所得を補償するベーシックインカムについて論を展開しています。
リンクより抜粋
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○長らく為政者による自己責任の強調で、社会的貧困が放置されていましたが、そろそろ冷静に社会制度を見直してもいい頃だと思います。小飼さんは昨年末、『働かざるもの、飢えるべからず。』を書かれ、その中で政府が国民の最低限所得を補償するベーシックインカムについての持論を展開されています。社会から貧困をなくし、まずは飢えずに済む制度を整えるべきだ。こういう発想をするようになったのはなぜでしょう?
『以前から税金は生前より死後とるのがいちばん効率いいと思っていました。つまり遺族ではなく社会が遺産を相続する形にする。
毎年約110万人の方が亡くなっていますが、そのうち高齢者が使い切れずに残していく財産が年間80兆円。仮にこの遺産相続人を国民全員にした場合、年間1人あたり64万円、月々にすれば約5万円が給付可能と試算できました。じゃあ相続税100%の財源でベーシックインカムができるのでは?と思ったことがきっかけで、この本を書きました。』
○専門外の分野でしょうから、独自の調査を相当されたのでしょうか?
『あまり資料がなかったし、そもそもすでにある資料の中から考える発想がありませんでした。僕が考えたのはこういうことです。
月5万円をベーシックインカムとして国民に配るとすれば、72兆円かかります。巨額さに驚くかもしれませんが、実は72兆円という金額は、日本政府の扱うお金としては大金とはいえません。政府が社会保障のために配っているお金は年間80兆円くらいです。』
○亡くなった方の残す遺産の額に相当しますね。
『はい。先述したように国民全員を相続人にした場合、年間1人あたり64万円ですから、4人家族であれば合計256万円。この額は2008年の世帯年収の中間値である443万円の半分を超えています。OECDによる相対的貧困とは、年収がその国の中間値の半分を下回ることと定義されているので、ベーシックインカムが実現されると、2007年の時点で15.7%あった相対的貧困率は事実上ゼロになります。』
○高齢者に集中したお金を相続税100%によって取り上げ、ベーシックインカムの財源とする考えには、富裕層からの反発があると思います。
『死ぬまでは好きに使っていいんですよ。死んで使い切れない分だけ政府が取り上げるだけです。
お金持ちのいちばんの問題は、お金を使わないことなんです。貧乏人のほうが何かと足りていないわけですから、生きている間、お金を必要なものに有効に使い切りますよ。
日本は60歳より70歳、80歳のほうがお金を持っています。年寄りは欲も減って、お金を使うのが下手になりますし、さらに70歳になっても老後が心配という世相があるからお金を減らしたくない。
お金が減ることを気にする方に言うのならば、ベーシックインカムを実行すれば生きている間、税金は安くなります。
2009年の法人税は15.6兆円、所得税は10.5兆円、消費税は10.1兆円ですが、僕の試算ではこれらの税金をチャラにしても、さらに10兆円程度あまります。
ボトムラインとして消費税と法人税を廃止して、所得税だけはプールしておくのもいい。優良企業と資産のある個人を日本に引きつける力になるでしょう。』
○つまり、小飼さんの発想とは、社会そのものを豊かにすることで、個人間の格差はあるとしても、社会的資源に個人がアクセスすることにより、飢えて死なずに済む。所有ではなく資源を自由に利用する社会をデザインしたい、ということですか?
『そうです。生きている間、どれだけ「この金も土地も俺のものだ!」と思っていても、死んだら使いようがないでしょう。
さらに踏み込んでいえば、「俺のもの」といえるものなど、現実にありません。すべて自然から借りたものを利用させて貰っているだけで、本質的に所有などしていません。
人は永遠に生きることはなく、命もいわばレンタルに過ぎない。そこまで考えてくれなくてもいいのですが、とりあえず「生きている間は使いたい放題。死んだら政府に納めたほうがトク」と思って欲しいです。』
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(Aへつづく) |
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