10/28(金)15:21掲載 YAHOO!のトップニュース。
かつては高学歴を獲得すれば、輝かしい未来が約束されるように思えたかもしれない。「大学全入時代」のいま、話はそう単純ではない。大学院卒でも希望する職に就けず不安定な生活を続ける「高学歴ワーキングプア」の存在も問題になっている。現代における「学歴」の意味と重要性とは。4人の識者に聞いた。(ライター・福島奈美子/Yahoo!ニュース編集部)
「YAHOO!ニュース」より転載します。
日本で「学歴」は意味を持つか
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■「学歴は指標として役立たない」と企業が気づきつつある
豊田義博・リクルートワークス研究所主幹研究員
豊田義博(とよた・よしひろ) リクルートワークス研究所・主幹研究員。東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。就職情報誌編集長などを経て、20代の就業実態・仕事観、新卒採用・就活などの調査研究に携わる。著書に『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』などがある。(撮影:菅井淳子)
私は就職情報誌の編集にたずさわったのち、リクルートワークス研究所で十数年、就職現場の学生や企業に話を聞き、調査を重ねてきました。新卒採用の現場における「学歴フィルター」というものがメディアでも取り上げられるようになったのはここ数年です。企業のイメージダウンにつながると考えているのか、「大学名で選別をしている」などと公表している国内企業はほとんどありません。
しかし、人事部の立場に立って考えてみると、採用過程では、スクイージング・コスト(採用対象の母集団を絞る時間、手間、費用)をとにかく抑えたい。「こういう人材が欲しい」という具体的なイメージがあるときに、何万という数の応募者が集まるなかで全員を面接するのは難しいですよね。いい方は悪いですけれども、その具体的なイメージから“はずれ”るリスクの少ない大学出身者を優先して面接する方が、効率はいい。人気企業が学歴フィルターをかけることは、その是非は別として、一定の合理性はあるというわけです。
ただ、過去にさかのぼれば、昔の日本企業の方が今よりもよほど厳しい「学歴採用」だったんですね。1960年代前半までは、大卒者自体が少なかったこともあり、ほとんどが特定の大学から推薦で選ばれた学生を採る、実質的な指定校制度で採用が行われていました。「あの企業に入りたい」と思っても特定の大学にしか求人が来なかった。今は公募が主流ですから、その頃と比べれば、就職市場はかなりオープンになっていると言えます。
■独自の採用方法を導入する企業も増えている
また、1990年代をターニングポイントとして、採用における学歴(大学名)が占めるウエイトは一貫して下がり続けています。なかでも1991年にソニーが「学校名不問採用」に踏み切ったのは、象徴的な事例でした。
日本企業が欧米水準に“追いつき追い越せ”で成長していた時代には、受験競争を勝ち抜く力、つまり知識や技術をひたすら吸収する力が、そのまま仕事の現場で生きたのです。しかし追いつくべきものがなくなると「受験で勝ち抜く力=仕事力」ではなくなってきた。企業は偏差値では測れない、創造性を持った人材を求めるようになっていったのです。現在ではトヨタ自動車、アサヒビール、TBSなどが学生に大学名を聞かない「学校名不問」を謳っていることが知られています。
2016年に採用で重視する項目について企業から採ったアンケートでは、「大学/大学名」はランキングで“10位”と、決して高くはありません。また、若年層の早期離職のリスクを人事部が意識するようになっている今、純粋に「優秀かどうか」よりも「社風に合うか」「働き続けてくれるか」をより重視する傾向は、さらに強まっています。
企業への志望度や相性、「この学生は、何かあるぞ」という成長可能性は、学歴、資格の有無、TOEICの点数などの型にはまった指標では測り切れませんよね。だから、企業は面接やグループディスカッションの仕方を工夫したり、インターンシップで実際に働かせてみたりして、学生の能力や思考行動特性を見極めようとするのです。なかには、応募者を集めて麻雀をやったり、卒業制作や卒論のみで評価するなど、ユニークな採用方法を実施する企業も増えてきています。
(図略)
優秀なだけじゃなく、意欲的に働き続けてくれる学生を採るために、企業側も年々工夫しています。学歴は採用の判断材料の一つではあり続けるとは思いますが、今後は「学歴だけ」で採用されるということはない。そのことは学生側もわかっておいた方がいいでしょう。
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(転載おわり) |
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