サル社会を解明しよう
30712 同類闘争圧力の弛んだニホンザル2例
 
田中素 HP ( 36 企画 ) 02/05/12 AM04 【印刷用へ
最近、対照的な2つのニュースを目にしたので紹介します。

一つは天王寺動物園のサル山の事例。長期政権を誇った旧ボスの死亡のあと、体格も腕力もトップで間違いなく新リーダーと目されていた個体が、ボスとしての調整役を果たす気が無く、群れの統制が崩れ始めているという話題です。なぜかこの個体はメスたちから総スカン状態で、母系社会のニホンザル社会で重要な「メスの信任を得る」というボスの資質に欠けている、と述べられています。

もう一つは嵐山モンキーパークの事例。元来オス移籍であるニホンザルの群れで、生まれたオスが群れを出ず、やはり長期政権の旧ボスの失踪後、8歳という最年少で新ボスに就任したというものです。この個体が170匹という大集団のボスになれた理由は、力を持つ親族メス一族=母親や姉ザルの後ろ盾によるもので、年上のオスザルとのケンカでも彼女等が加勢することで食べ物を得る序列が自然に一位になったようです。但し、この新ボスも周りにいるのはいつも一族ばかりで、他のメスにはもてないそうです。

動物園や餌付けザルでは当然同類闘争圧力は極めて低いですが、それが続くと群れの秩序がここまで歪に変貌するということです。序列共認がやはり群れにかかる同類闘争圧力の高さと連動しているということは間違いなく、現代の群れを観察して「サル社会の序列はさほど強くない」とする報告が、このような圧力⇒共認の変化を考慮に入れていないことがさらに鮮明になったと思います。

この異変は、いずれも旧ボスの長期政権の後に起こっています。動物園は言うに及ばす、嵐山の170匹という個体数も餌付けの結果起こったものであり、ヒトもサルも、外圧低下状況での長期政権は群れ秩序崩壊の予兆といえそうです。また、オス残留という現象も、闘争共認を高めるためにオス残留に移行したチンパンジー(2195)とは違って、母−息子間の親和延長が主因のようです。これも、闘争圧力のない現代の家庭を彷彿とさせます。

一方で非常に興味深いことは、頼りない新ボスへの一般メスの評価失墜が際立っていることです。女原理は安定志向、闘争忌避というイメージがありますが、それは集団への闘争外圧の低下や個体間の和平ということではなくて、本来はむしろ集団内の明確な序列秩序を求めている、ということなのかも知れません。
 
 
 
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101384 サル社会からみた序列共認 村田頼哉 05/11/24 PM11
31773 雌の秩序規範も同類闘争圧力に適応すべく形成される 冨田彰男 02/05/24 AM02
30856 女は・・・。 猪原裕子 02/05/14 PM02

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