健康と食と医
291938 外圧適応の歴史が構築した、微生物の「万能」な能力。
 
西谷文宏 ( 37 建築設計 ) 14/07/01 PM11 【印刷用へ
るいネットでは乳酸菌を始めとする微生物を利用した可能性追求や、腸内細菌等の人体共生細菌の有用性の追求がなされている。
微生物の持つ様々な分解能力・浄化作用には驚かされるばかりで、放射能や石油の除去などの環境浄化作用、乳酸菌発酵による農産物の生育、腸内細菌による免疫活性化など、微生物は文字通り「万能」であるように感じられる。
実際、21世紀は微生物療法・微生物浄化の時代とまで言われ、医療・健康分野を始め様々な有用性細菌の研究、事業化の取り組みがなされている。

なぜ微生物には、このような「万能」とも感じられる能力があるのか。

微生物とは、一部肉眼では捉えられないワムシなどの小型動物も含むが、一般的に真正細菌・古細菌、真核生物である藻類・原生生物・菌類・粘菌等を指し、その殆どは単細胞生物である。(微生物の定義は肉眼で判別できないと言う判断基準の為、極めて広義で曖昧な分類と言えるが、有用性が検討されている微生物は殆どが単細胞生物であるので、≒単細胞と考えて差し支えないと言える)

生物は約35億年前に原核単細胞生物として誕生し、18億年前に真核単細胞生物が登場。大型多細胞生物が登場するのは実に約6億年前である。人類含めて生物の進化史の80%以上が単細胞生物≒微生物の時代だったと言える。

35億年の間には、海水・大気成分の劇的な変化や温度変化、全球凍結など想像を絶するような過酷な外圧の変化が繰り返し起きており、そのような外圧状況の変化の中を生物は生き抜いてきた。言い方を変えれば、繰り返される外圧変化の中、微生物はあらゆる方向に可能性探索を行い、進化適応して来たのだと言える。

少しでもエネルギー源=食料として使えるものはその体内に取り込む=捕食を行う。捕食過程では取り込んだエネルギー源の毒性を処理しきれずに死滅したものも天文学的数字に上るだろう。そのような中でなんとか適応できたものが次代へと生命を繋いできた。

限られたエネルギー源を利用する上では、必然的に特定のエネルギー源に複数種・多くの微生物が集まる。その中では種の間で捕食しあう関係も生まれてくる。
着目されるのは、この群生関係の果てに、相互の能力を利用しあう「共生関係」が生まれてくることである。

複数種の微生物が集まったバイオフィルムと呼ばれる一つのコロニーの中で、他種が生産した副産物をエネルギー源に利用、他種の分解能力を利用、複数種の分解能力が集まることで効率的に分解を行うなど、それぞれの微生物種が種の生存力をあげる為に、「共生」関係へと収束していくのである。驚くべきことに、このバイオフィルムのコロニーの中では、異種の微生物間での情報伝達まで行われていることが最近の研究で明らかになってきている。
人体を含む多細胞生物の体内においても微生物群の共生関係が見られ、腸内細菌や口腔内細菌、皮膚常在菌などは多くの微生物種が共生しながらコロニーを形成している。

また、群生の中からは、他種を取込む形での共生関係(=捕食の発展形としての共生関係)も生じた。好気性細菌(ミトコンドリア)を取り込んだ真核単細胞生物はこのようにして誕生した。(ミトコンドリアや葉緑素の取り込みによる真核単細胞生物が最も事例としては典型的だが、前駆的な生物で取り込み共生を実現した事例は膨大な数が存在する)
微生物が持つ「万能」とも思われる能力は、35億年の中であらゆる方向に可能性探索を行ってきた進化適応の歴史がもたらしたものと言え、また、外圧適応の為の共生関係がもたらしたものと言える。そして、この外圧適応の歴史こそが「自然の摂理」そのものであると言える。
そういう意味では有用微生物利用の探求とは、自然の摂理の探求そのものと言えるだろう。

一方、現在の有用微生物利用の探求は、なんらかの有用能力を持った特定微生物=単一種を見いだすことに重きが置かれている(生物学におけるこのような特定行為を「同定」と言う)。
これは、機械を分解するかのように自然対象を一つ一つの要素に分解して(都合よく)理解すると言う、西洋近代科学における「要素還元主義」の結果であると考えられるが、微生物の真の有用性は恐らく「共生」にある。
例えば飯山一郎氏に始まる自家製乳酸菌の利用は、その様々な効果がるいネットにも寄せられている。この自家製乳酸菌は自然発酵によるので、様々な微生物が共生しているものと思われ、これらの共生細菌が一体となって浄化能力を生み出していると考えられる。

既に腸内細菌など人体共生菌の研究分野においては、人体を一つの共生生体コロニー(超有機体)として捉えるような視点が広がり始めているが、有用性細菌の研究成果を調べるほどに、西洋近代科学の要素還元主義の影響は色濃いと感じる。
そういう意味で、微生物の(有用性)追求はまだまだスタート地点にあり、常に「自然の摂理」の視点から追求していくことが重要であると感じられる。
 
 
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