日本人と縄文体質
291647 日本人は無類の花好き。
 
阿部佳容子 ( 51 営業 ) 14/06/24 AM00 【印刷用へ
幕末〜明治初期の西洋人が外から見た日本、そして滞日歴30年の著者が現在見ている日本。その両方を往復しながら、日本の美の本質に迫る書物を見つけました。「日本人は無類の花好き」という章から紹介します。

以下、呉善花「なぜ世界の人々は『日本人の心』に惹かれるのか」より
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無類の話好き―まさしく日本人はそうだと強く実感したのは、いわゆる江戸の裏店(うらだな)といわれる界隈を歩いたときだった。狭い路地に面した家々に沿って、無数の鉢植えの花が足の踏み場もないほどにズラリと並んでいるのだ。路地のずっと先まで、道幅の3分の1ほどがまっすぐに花の帯で埋まっている。こんな光景は、韓国ではもちろんのこと、私が訪れた欧米の庶民街でもアジアの庶民街でもまったく見たことがなかった。

「日本人の国民性のいちじるしい特色は、下層階級でもみな生来の花好きであるということだ。気晴らしにしじゅう好きな植物を少し育てて、無上の楽しみにしている。もしも花を愛する国民性が、人間の文化生活の高さを照明するものとすれば、日本の低い層の人びとは、イギリスの同じ階級の人たちに比べると、ずっと優って見える」
フォーチュンはイギリスの園芸学者、万延元年(1860年)から1年余り江戸を中心に植物採集をしたときの記事である。花好きの江戸庶民は裏店の居住者に限らず、各方面にわたっていたことが次の記事からも想像される。

「日本人は美しい景色だけでなく、花も大好きなのだ。むっつりした顔つきの車夫が、がたの来ている人力車の梶棒をおろし、まるで小学生のように両手を拡げて丈の高い花叢へかけこんだとき、私はそれほど驚きもしなかった。熱狂の発作がいくらか鎮まると彼は、腕いっぱい、明るい黄色や白色のキク科の花や、オレンジ色の百合や、たくさんの美しい真紅の実のついた優美な枝を抱えて戻って来て、それで彼の車を飾った」

過酷な肉体労働を業とする者が花を飾るなんて・・・。西洋人には思いも及ばなかったことだった。その驚きがこうした見聞を書き留めさせたのである。これは韓国人にとっても思いも及ばないこと。およそどこの国でも、花を見て喜び楽しむのは上流階級の人たちの趣向ではあっても、長らく庶民一般に広く行われるものではなかったのである。

ともかく日本人の花好きは尋常ではない。なぜなのだろうかとずっと考えてきたが、日本人の古くからの花をめぐる信仰習俗に由来を求めるのが最も適切だろうと思っている。折口信夫は次のように書いている。

「神が天から降りて来られる時、村里には如何にも目につくように花がたてられて居り、そこを目じるしとして下りて来られるのです。だから、昔の人は、めいめいの信仰で自分々々の家へ神が来られるものと信じて、目につくように花を飾るわけなのです。」

花を立てるという場合の花は、花の付かない草木をも含んでいる。門松などもその花の一つである。そこから室町時代に立花(たてはな)と呼ばれる挿花が生まれ、やがて江戸時代に生花と呼ばれる現代に至るいけばなの様式が整った。いけばなは、神を迎えて花を立てた村の人たちの信仰習俗に由来している。

「ヨーロッパでは、野性的にいろんな色の花を一塊に集めることが花束をつくるすべてであるが、それと比較すると、日本の生花における枝や葉の線の配列は、計り知れぬほど高度のものである。」

日本のいけばなと園芸は、各国大使夫人たちを皮切りとして、「数多くの信者」を獲得していったのである。
 
 
 
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