経済破局は来るのか?
291640 BRICSバブルの終焉が残したもの=世界規模の供給過剰
 
山澤貴志 ( 49 ITコンサル ) 14/06/23 PM10 【印刷用へ
先進国の市場飽和=供給過剰によって生じた資金余剰は、その解消先を投資から投機へと転換させ、日本バブル、ITバブル、アメリカ住宅バブルと様々なバブルを引き起こしてきたが、2008年のリーマンショックではじけたCDS債権は先進国全体に大きなバブル後遺症をもたらし、先進国におけるバブルの可能性を消滅させてしまった。それでもアベノミクスをはじめ、マネタリスト理論主導の量的緩和が進行しているが、その資金の向かう先は金融機関の救済であり、実体経済のデフレは止められず、資源や日常必需品だけがインフレ傾向となる中で、貧富の格差は拡大し、大衆消費はますます萎縮していっている。もはや先進国における市場縮小は決定的である。

 ではBRICsはどうか。2003年のゴールドマンサックスのレポートによって火がつけられ、BRICs市場は急拡大したが、2012年以降は伸び悩んでいる。2012年中国は13年ぶりに8%成長を切ってしまったし、2012年のブラジルは1%を切ってしまった。リーマンショック以前は10%を越える成長を見せたインドも2012年は4%を切っている。

 このBRICs市場の伸び悩みは一時的なものだろうか。

 内閣府大臣官房審議官をも務めた元三菱UFJモルガンスタンレー証券チーフエコノミストの水野和夫氏は「資本主義の終焉と歴史の危機」の中で、新興国の成長率の急拡大はもうないと、断言している。そしてその根拠は、BRICsの市場拡大の原動力が先進国の消費拡大を原動力としていたことにある、と分析している。

 確かに、インドにしろ中国にしろ、先進国のバブル的な消費拡大を原動力として「世界の工場」として急成長を果たしてきた。そしてその結果、世界の工場たる中国は膨大な設備過剰に陥っている。いや中国には膨大な内需に対応した投資がある、という人もいるかもしれない。しかし中国は毎年、GDPの半分を経済成長に必要な固定資本形成(住宅投資、設備投資、公共投資)に振り向けており、それを10年も続けている。統計的に経済成長に必要な固定資本形成は国家経済規模の3割程度とされており、それをはるかに上回る投資を続けてきた中国は、あきらかに住宅・公共投資も供給過剰にあると考えられる。そしてだからこそ、シャドーバンキング問題が発生し、膨大な不動産バブルの後処理を迫られているのだろう。


 つまり、BRICsですら、今や設備過剰とバブル崩壊後を生きているのだ。

 このBRICsにおける設備過剰=供給力過剰という現象を遡って考えると、2003年にゴールドマンサックスがBRICsブームに火をつけたのは、既にこの時点で、BRICs自身が十分な生産力=供給力を手にしており、先進国のみならずBRICsを含む世界経済全体が、供給過剰に陥っていたからではないかという疑問が沸いてくる。そしてBRICsを含む世界の供給力過剰という状況が2002年頃には出来上がっていたのだとすれば、2002年以降の日本を含む世界的な人々の意識潮流の変化の直接的原因ともなったのではないか。

 私たちは、先進国のみならず世界規模での供給力過剰という経済環境を生きている。そう考えると、水野氏のいう「資本主義の終焉と歴史の危機」は待ったなしの現在的状況認識であり、それは同時に「脱経済成長の可能性」が開かれたことを意味しているのではないか。
 
 
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