先ず、よく言われことですが、「遺伝的に近親相姦が不利な結果をもたらす」とは言えないようです。
血が濃くなるというのは、劣性遺伝が発現しやすくなると言うことですが、劣性遺伝というのは遺伝上の優劣であって、その性質の優劣ではありません。
例えば O型は遺伝上は劣性遺伝ですが、A,B型に比べて能力的に劣るわけでは有りませんよね。
逆に隠れている優れた特質が発現する可能性も有るのです。
またもし、インセストタブーが本能としてセットされているのなら、あえてタブーとして観念化する必要は無かったはずです。
敢えて、観念化してタブーとしたのは、やはり文化的な問題と考えた方が自然です。私はレビ・ストロースの『社会全体からみて,婚姻による女性の交換は,家族や親族などの集団が他の集団との紐帯をもつのに最も有効な手段であり,その機会を確保するため近親相姦や集団内の婚姻が禁じられるようになった』との主張を支持します。
以下「平凡社世界大百科事典」より抜粋ですが、
『遺伝学的にみて近親交配が集団全体の存続につねに不利な結果をもたらすとは限らないし,初期の人類がこのような経験的知識をもとに制度をつくりあげたという点にも疑問が残る。』
『人類は近親相姦を本来回避するという立場の代表として,禁忌は本能に基づくという説がある。これは近親相姦が多くの社会で,口にすることさえはばかるほど嫌悪の感情と結びつき,人々自身が人間の本性であると説明することとも合致している。しかしこの説の弱点は,本能によって抑制されていることに禁忌の規定は不要であり,また近親相姦の範囲や制裁のあり方が多様である点を説明しえないところにある。』
>サル学で著名な河井雅雄氏によると、サルの社会ではインセント・タブーがあるとのこと。「親とは絶対しない、兄弟ともない」そうです。<
これは、観察者によってかなり違うようですね。(以下は同百科事典より引用ですが)
『アカゲザルやニホンザルなど多雄多雌集団を形成している種においても,かなりのオスが出生集団を離れて他の集団に移り,またとどまっている場合でも母子,キョウダイ間の交尾はそれほど多くないという報告もある。』という程度が実態ではないでしょうか
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