共認心理学:現代の精神病理
281856 グルジェフの目指した人類の覚醒
 
THINKER・鶴田 HP ( 40代 自営業 ) 13/10/03 AM11 【印刷用へ
 社会や組織における人間関係を円滑にするため、あるいは個人の幸せや成功のために、または単なる興味本位のネタとして、しばしば性格分析が用いられる。
 性格分析には、血液型分類から星座など占い的イメージの強いものから心理学的なものまで様々な種類がある。なかでも、その深遠さと的確さで知られるエニアグラム性格分析は人間を9タイプに分けるもので、元はイスラム密教のスーフィズムの秘伝とされる。(※現在のエニアグラムは、リーダーシップのトレーニングやコーチング、またハリウッド映画のリアルな脚本作りにも活用されるほど普及している)

 この秘伝を近代の世に知らしめたのは、知る人ぞ知る20世紀最大の神秘家G・I・グルジェフ(1866−1949)。彼は著述家・舞踏作家・作曲家、精神的指導者など多岐にわたる活動を通じて、20世紀初頭の欧米の著名人に多大な影響を与えた。
彼のライフワークは、戦争や内乱などで表面化する大衆の異常な集団心理を解明することだった。その中で彼は人々が容易に「集団催眠」に陥るのは「外部からの影響に弱いため」であり、この脆弱性を人々から取り除き、個人の体内に自発的に稼働する「センター」を作るべく、ごく限られた人や弟子たちに特殊な注意力を養うワークを教えた。それは、人間が生きる意味と目的を明確にする作業でもあった。

 エニアグラムにおける人間の成長は、円の中の九角形で表現される。1番から9番までの性格には、その番号独自の特徴があり、長所と同時に落とし穴がある。これを自覚しながら、最終的には円のようにすべての番号の特長を備えたオールマイティな人間になるのが、その目標とされる。その方向性は、角の取れた丸になることを目的とする禅に似ている。その一方で、それは、金融の支配する現代社会においてマスコミが助長する放縦でいびつな個性やカリスマ、アイドル、競争心、勝ち組志向とは対照的である。

 グルジェフは、「人類は眠っている」「人はみな機械である」「人は一人ではなく多くの〈私〉を持っている」など洞察の深い言葉を残した。これらの言葉の意味は、「ほとんどの人は催眠状態で日常生活をしており、その発想から行動や立ち振る舞い、またその感情的反応に至るまで、自分で自由に選択していると思い込んでいるが、実は全て悉く外部からの影響に対する自動的で機械的な反応であり、個人個人で決まったパターンばかりを繰り返している」ということである。この機械的な反応の繰り返しから抜け出すことのできた人間だけが、本物の人間であるという。

 人が催眠状態にあるのは、画一化された学校教育やマスコミの流すプロパガンダから影響を受ける「社会的洗脳」のほかに、親の影響や幼少期のトラウマ体験などから自分で自分の性格を決定づけている「自己的洗脳」の双方があるだろう。
人が催眠状態から抜け出て、トラウマ体験から形成された個性ではなく、本当の意味での「その人らしさ」や「個性」を発揮して、人と調和しながら真の平和な社会を作るには、この双方向からの洗脳をバランス良く、解いていくことが大事ではないだろうか。

 グルジェフのワークは、個人の意識の覚醒を目指したものだったが、集合的な自動性に対抗する上では個が無力であることを熟知したうえで、共同(体)での取り組みの必要性を強調していた。彼が過ごした世界大戦当時と重なる激変する現代において、エニアグラムの奥にある彼の目指したものに再び注目してみることは非常に有益なことだろう。
 
 
 
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_281856

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、43年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp