試験制度と暗記脳
280193 「学歴エリート」は暴走する(2)
 
安冨啓之 13/08/20 PM09 【印刷用へ
280192の続き

■「気のきく事務屋」たちの暴走

事務屋がリーダーになる・・・・・・。しかし、それは日本経済が右肩上がりで、やるべきことをやれば企業が成長拡大していく情況の中で通用する話でした。
日本には欧米先進国という師匠がいましたので、大枠としては欧米から学べばなんとかなったのです。
しかし日本経済が成熟し、もはや自分で考えないといけなくなった途端、日本経済は傾き始めます。企業が今まで同じことをしてもまったく稼げなくなると、リーダーには新しい「判断」が求められます。厳しい局面では「決断」もしなくてはなりません。

「判断」や「決断」というものには、「求められている答え」はありません。自らの頭でゼロから何かを考え出さねばいけないのです。それは「気のきく事務屋」にとっては未知の難問でした。
できないのではあれば「できない」と言えばいいのですが、やはりプライドが邪魔をしてそれもできません。結局、彼らは自分たちの持ち味である「高速事務処理能力」「バランス感覚」でこの危機を乗り越えようとします。

その象徴は長銀の末路でしょう。
「バブル崩壊」という言葉が現実味を帯び始めていた1991年、長銀では頭取・会長・さらに関連会社もすべて同期(長銀一期生)という異例の布陣を敷きます。みな東大法学部出身は言うまでもありません。
その結果「全体の不良債権がいくらになるのか誰も知らない」という異常な銀行経営が行われたのです。これは頭取は銀行本体、会長が関連会社というふうに完全に経営が分断されてしまったからでした。
「気のきく事務屋」にリーダーを任せると、どんでもない暴走が始まるという実にわかりやすいケースではないでしょうか。


■学歴エリートと高級官僚

バブル崩壊前後で、このような「事務屋の暴走」が日本中で起きました。そこでようやく「事務屋はどんなに気がきいてもリーダーに向いていない」という当たり前のことに気づきました。これが、東大卒の社長や役員が1995年から2010年の間で激減した最も大きな理由です。

そんな経済の世界では、お払い箱になりつつある「事務屋」がいまだに我が物顔でこの世の春を謳歌している業界があります。それが「官公庁」です。

彼らは、先ほど申し上げた通り、他の道で成功する確率が低いことを知っているがゆえに官公庁の「エリートコース」を選んでいるのです。

彼らは官僚という仕事が、自らが鍛えぬいてきた「高速事務処理能力」と「バランス感覚」をもっとも活かすことができる世界だということを早くから見抜いているのです。

国家公務員試験T種の合格者が「キャリア」と呼ばれ、要するに「試験が受かれば出世できる」というわけです。

「学歴エリート」というのは子供のころから「どうすれば出世できるのか」という問いに対する「答え」が明確に出ている「キャリアパス」が非常にしっかりくるのです。

国のために尽くしたい、人の役に立ちたい。そのような志望動機を高級官僚の方々がお持ちだということを全否定するつもりはありませんが、多くの「学歴エリート」たちが官僚を目指すのは、「霞ヶ関」が自分自身の生き方を肯定してくれる世界だからということが大きいのです。

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「学歴エリート」の暴走や無能ぶりは福島原発事故を見ても明らかですが、今後はますますその問題性が明るみになってきます。
その中で保護者の意識も学歴ではない「将来に役に立つ力」に強く収束してくることは間違いないと感じています。
 
 
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