私権社会の婚姻制
2796 夜這いの解体と一夫一婦制の確立2
 
矢野聡子 ( 29 営業 ) 01/04/05 AM03 【印刷用へ
<明治時代 一夫一婦制実施>
明治になって男女の結婚関係にも国家権力が介入するようになり、法令的な届出と戸籍記載による公認方式がとられ、一夫一婦制が実施された。これによって事実として結婚していても、登記しないと結婚とは認めず、「内縁」関係として私的に承認することになったが、こうした男と女の「法律」的慣行は、もともと日本の民俗としては存在せず、ただ国家権力によって導入されたものにすぎない。私たちの古い性民俗は多重的であって、単層的、つまり単一の法定的結婚様式をとらなかったのである。このことを理解しないと、夜這いその他の性民俗の性格がわからないだろう。


<明治時代 資本主義侵入>
電灯の普及と民家の構造変化も、夜這いの廃絶のために打撃を与えたのは確かだが、やはり資本主義の侵入、商品流通の社会構造の変革が根本的素因と思われる。

明治政府は、封建領主ですらしなかったような、まさに掠奪的地租を賦課して農村を荒廃に導いたのである。それは予定されたことで、いわゆる資本の原始蓄積、産業の資本造出のための手段であることは明らかであった。かくして土地を奪われた農民は都市へ流出し、産業資本のために安価な労働力を提供する貧民として定着する。ムラには、相互扶助の伝統があった。しかし土地を自ら放棄し、都市へ欠落ちしなければならなかった人たちは、出身の郷村とも絶縁するようにして都市へ逃亡する。低賃金による酷使と重労働、災害による死傷、都市の一隅への集中、貧民街の成立、こうして労働者、貧民の子女は遊廓その他へ売り渡され、残った妻たちも潜行的売春で漸く露命をつなぐという図式ができた。多くの親たちの中には、進んで子供を売り渡した者もあっただろう。しかし、その意識がどうであれ、娘や子供を年季奉公で売り渡し、遂には妻にまで売春させねば生きてられないような、荒廃した世界を富国強兵とか、万国無比の国体の影で築き上げた独占資本と国家との責任は、さらに重大なものであったといわねばならぬ。
 
 
 
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