実現論を塗り重ねてゆく
265317 専門分化による高度化・効率化には大きな限界がある
 
田中素 HP ( 46 企画 ) 12/06/11 PM09 【印刷用へ
6/10なんでや劇場で展開された議論の要約です。
> 運動を成功させるには、理論が必要になるし、広宣活動も必要になるし、情報収集も必要になるが、理論を追求するにも、広宣活動を展開するにも、情報を収集するにも、膨大な余力(時間)が必要になる。そして、もちろん、それらの活動は、何れも専任した方が集中できて高度化してゆくので、専任化した方が有利になる。264228

「専門分化した方が高度化する」というのは本当だろうか?

この問題を考える上では、まず集団の分化には2種類あることを押えておかなければならない。一つは、集団の統合のためのタテの『統合分化』、もう一つは、高度化・効率化のためのヨコの『専門分化』であり、この2つは分けて考えなければならない。

この視点で人類史を見てみると、集団分化はまずタテの統合分化、次にヨコの専門分化の順で起こってきたことがわかる。集団を統合する上で、統合者は不可欠であり、従って、タテの統合分化は極限時代から存在する。それが始原人類集団を統合していたシャーマンであり、シャーマンの役割を継承したのが古代の僧侶・宗教家である。次の時代の古代国家の王や官僚も、タテの統合分化上の存在である。なお、王や官僚は私権闘争により獲得された身分でもあるため、この統合分化には集団統合の必要性だけではなく「誰にも渡さない」という権力維持の動因が働いている。

高度化のためのヨコの専門分化は、ルネサンス期の職人や芸術家から本格的に始まった。これは、より質の高いものを求める宮廷需要発である。確かに、農民のつくった茶碗よりプロがつくった茶碗の方がモノが良いのは明らかで、専門分化によって部分的な高度化・効率化が実現されるのは事実である。この宮廷発の高度化・効率化需要を足がかりにして市場が形成され、それを引き継いだ近代市場社会になると、一気に専門分化が進んでゆく。

では、こうして近代以降、専門分化が進んだ結果、どうなったか?
近代科学は、本来、無限の構成要素が連関している自然という対象をわずか数個の断片要素に分解し、研究の前提条件を限定することで専門分化した。断片化された科学知識を応用した技術は目先の生産効率を上昇させたが、近代科学はその帰結として、後戻りできないほどの地球破壊を引き起こしてしまった。
また、際限ない専門分化の結果、現在の学問の停滞に見られるように、今や学問はほとんど無価値なものに成り下がり、科学はまるで進化を停止して終ったかのような惨状を呈している。

おそらく、専門分化には、分化による高度化はほぼ100年程度で飽和してしまう、という追求の限界と、これ以上分化してもむしろ効率が低下する、という細分化の限界がある。従って、専門分化により部分的な高度化・効率化が実現されるのは事実であるが、だからと云って、「トコトン専門分化を進めれば良い」と考えるのは大きな間違いであり、専門分化には大きな限界があることを知らねばならない。

とりわけ、本来「分化」と一体のものとして追求されるべき「統合」を捨象した近代の専門分化は、単なる限界を孕んでいただけではなく、致命的な欠陥を孕んでいたと見るべきだろう。
 
 
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企業の浮沈を握る認識シリーズ(5) 組織統合の構造:タテの統合分化、ヨコの専門分化を活かすには? 「日本を守るのに右も左もない」 12/10/26 PM06

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