近代市場の拡大
265003 江戸時代の学者:本多利明の思想
 
小澤紀夫 ( 40代 営業、企画 ) 12/06/03 PM05 【印刷用へ
 江戸時代の学者:本多利明は天明の飢饉を教訓とすることで、寛政時代の頃に出来上がりました。その思想はなんと西洋を見本とするような内容でした。以下にその概要をまとめます。

<一部引用開始>
リンク近世越中国で展開された寺子屋教育や学問の状況について

 国民人口増加の根源は夫婦にあり、人口増加率は十九・七五倍であるから、西欧では王侯でも一夫一妻である。当然食糧を増産せねばならず、これを開業(殖民)と貿易に求めれば、わが国はイギリスと並ぶ二大富国・大剛国になるであろう。そうすれば天からの預り者である人々を餓死させるなどということは無くなる。これはまさに永久不易の善政にして、自然治道の制度である。
 
 渡海技術や天文・算術を学び、利益を収奪する商人には委ねず幕府や藩が管理せねばならないこと、異国との交易は戦争同様であるから是が非でも利益をあげねばならぬことを強調する。

 東アジア諸国は米を主食に草木の葉枝・幹根を次食、肉食を慰食としているため、温和・惰弱であり、家は木造のため、子供は草木のように智恵が脆く淡白である。一方後者の西洋諸国は肉や油を主食に、果実・穀類を次食としているため、勇猛で知性があり、家は石で出来ているので、子供は金石のような賢く才がある。
 
 また蝦夷地は雲霧が深く湿地の多い寒国であるが、遍く焼き払えば百穀豊熟の良地となる。この開拓には奥羽・越後・佐渡・加賀・能登よりの移住者と囚人を用いればよい。やがて「カムサスカ」に都を移し、「西唐太島」に大城郭を建立し、「山丹」「満洲」と交易し、国号を古日本と改め、仮館を据え、貴賎の内より大器英才で徳と能を兼備した人物を選挙して郡県に任じて地方の開拓に力を入れれば、数年で世界第一の大良国となる、というように思いは拡大していった。そのためには西欧諸国に倣った改革が必要であり、賢君明主・英傑の仁政が必要であるとする。

 加えて町並みとゴミ問題や仮名文字をローマ字に改める論などを展開し、慈悲を根本としたキリスト教を自然治道の理にかなったもの、西洋の英雄は自然治道の体現者であり、神・儒・仏の道も本来はキリスト教に淵源があるとまで言い、わが国に真の治道を得ない原因は支那の思想・文化を崇拝したからと、地動説を例に挙げて難じた上で、西洋式に万事切り替えることを主唱する。

<引用終了>


 
 本多利明はなぜ西洋を賛美したのでしょうか。彼の生い立ちを調べてみました。

 十八歳で江戸にて和算を関孝和正統で幸田親盈門下の今井兼庭に学び、また幸田門下の千葉歳胤に天文・暦学を学び、漢訳洋書を通じて西洋を研究しました。このことで利明が通商・航海を主唱する因となったようです。また工藤平助から蝦夷地の情勢について知識を得、北方のロシアとは開国・交易をもって対処することを持論にました。
 江戸時代後期の商人が活躍した時代、また天明の飢饉を教訓として、漢訳洋書の西洋研究をとおして、その打開策として行き着いたのが彼の思想だったのでしょう。
 
 ヨーロッパ列強は、国内一丸となって植民地を獲得して列強となっていったような事情を漢訳洋書の西洋研究から本多利明は知り、日本もヨーロッパ列強のマネをしなければ逆に植民地とされる恐れがあることに感づいていたかもしれませんね。

 同じような時代に生きた佐藤信淵(さとうのぶひろ)も同じように多くの西洋書を読んで、 重商主義・絶対主義的な国家社会主義の構想を説きました。江戸を「東京」と改称し都を置く、二都制を提唱したことでも知られています。
 
 
 
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