近代市場の拡大
263429 寺社とは何か? 中世の寺社勢力
 
斎藤一浩 ( 40代 建築士 ) 12/04/26 PM00 【印刷用へ
中世にまで遡っていくと、現代の宗教法人とは全く違った「寺」が見えてきます。

寺社は、寺社都市を中心とした、経済、政治の支配者で有り、同時に金融支配者(=高利貸し)でもあり、法執行権も持っていた。
朝廷からの庇護、武士からの宗教的な畏怖を受けていたので、時代の特権階級でもあった。
意表的な物では、興福寺、比叡山などは、自治都市堺などと並ぶ、都市勢力をなしていた。

以下に、寺社が備えていた物を整理しておきます。
「お寺」に対する認識が、全く変わります。

1.武力

鎌倉幕府倒幕時に、後醍醐天皇らは熊野・高野山・叡山に出兵を要請した。
この時の功績の恩賞として、叡山は若狭守護職が与えられている。

特に、叡山はただの武装集団では無く、戦場において槽達の手柄を記録、報告、審査して論功行賞を行う軍奉行を備えた武士団の様な性格を持っていた。

実践的にも、中世初期から、寺社同士の決戦はいくつも行われてきて、武士群、同様に数千人規模での戦闘が行われていた。興福寺VS延暦寺の興福寺からの果たし状は文書が残っている。

2.技術力

中世最初の山城建設は叡山。
城壁、堀、東西の塔を持ち、「城郭」を形成している。(因みに「城郭」は仏教用語)
同様に、根来寺(和歌山県岩出市)、平泉寺(福井県勝山市)等も強大な軍事力とともに、高度な石塁施設を築造しており、織豊政権より先行している。

3.観念

鎌倉時代末期、比叡山僧光宗が「渓嵐拾葉集」という本で、仏教以外に、武術、医学・土木・農業などの俗学を学んだと語ったように、中世において寺院は、先進文明、先進文化を生産し続ける場であった。
ルイス・フロイスは、当時、叡山を「日本の最高の大学」とみている。
対して、鎌倉時代、漢字を書ける武士は少なく、武士の文書は平仮名で書かれていた。
(学呂で漢字を書けない物など一人もいない時代である)

4.市場

中世の都市の多くは、寺社建築(ある意味摩天楼)を中心に、商工業・住宅地が配され、その外側に貧困民が集まる「寺社境内」が囲んでいた。
戦国時代の一向宗・日蓮宗寺院の「寺内町」が有名だが、平安時代から、京・太宰府・鎌倉だけで無く、南都北嶺、東寺、醍醐寺、石清水八幡宮寺、四天王寺など。無数に存在していた。

この「境内都市」は、油屋、紺屋、酒屋、武器屋が建ち並び市場を形成し、金融業者の土倉・蔵が建ち並ぶ金融街でもあり、法体職人が集住する一大工業都市でも有った。
根来寺「境内都市」では、都市内家屋の多くが、瓦屋根であった。大名の城さえも瓦を使っていぶりを物語っている。
また、根来の堅牢な漆塗りは有名で、日本全国に流通していることからも、全国的な市場経済ネットワークを確立していた可能性も高い。

宣教師ルイス・フロイスはこの根来寺僧の様子を見て「俗人の兵士の如き服装をなし、絹の着物を着し、裕福である故、剣および短剣には金の飾りを付し。衣服は俗人と異なるところがない。ただし頭髪は背の半ばに達するまで長く伸ばして結ぶ」と記している。とても宗教上の僧侶とは呼べない。

5.領主

寺院は、荘園領主としての性格も持ち合わせていた。所謂、寺社領荘園。
守護として領地を管理し、年貢を集め、警察権、裁判権、徴兵権を行使していた。
加えて、武士団同様に領地拡大に励み、戦闘後の敗者領地を「寺社で無ければ、祟りを納めきれない」などと、宗教的な正論も利用していたので質が悪い。
鉄砲に支えられた強大な軍事力を持つに至った、根来寺は、和泉守護細川元有、幕府有力者三好実休を滅ぼし、戦国大名にまでなっている。

以上、参照図書:「寺社勢力の中世」(伊藤正敏)
 
 
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