248233の続きです。「これ以上のエネルギー消費拡大は犯罪 原発がすべて止まっても決して停電は起きない」<小出裕章>こいで・ひろあき:京都大学原子炉実験所)より転載。
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●原発は巨大な「海温め装置」
7月に柏崎刈羽原発が地震で深刻なダメージを受け、原発の安全性は根本的に問い直されています。国や電力会社は日本の電力の30%を供給している原発が止まったら大変なことになると宣伝していますが、すべての原発が停止しても電力供給には何の問題もありません。
日本には火力発電所を含めて膨大な数の発電所があります。それらの年間を通しての稼働率(=設備利用率)は5割にも満たない状態です。原発を全部停止して火力発電で代替したとしても、火力発電の稼働率は7割にしかなりません。
こうした事実に対して国や電力会社は、「電気は貯めておけないから、真夏の一番暑い時の電力消費ピークに対応するために原発は必要だ」と反論します。しかし過去のデータを調べれば、火力発電と水力発電だけで十分に最大需要電力量を賄えることが分かります。
確かに90年代初頭の数年だけ、原発がなければ足らなかった年はありますが、それ以降はまったく問題ありません。しかも最大の電力需要は、真夏の一番暑い3日間ぐらい、午後数時間にしか必要とされません。もし、原発がなければ電気が足りないというのであれば、その時間だけみんなが仕事を休めばなんのことはないのです。
国や電力会社はもう一つ、地球温暖化防止=CO2削減のために原発が必要だと主張しています。しかし地球温暖化の原因が炭酸ガスかどうかは科学的には証明されていません。私は可能性はあると思いますが、本当のところを突き詰めていくと未だ不明です。
もし炭酸ガスが温暖化の原因だとしても、原発は解決策にはなりません。少し前まで国や電力会社は、「原発は炭酸ガスを出しません」とPRしていました。しかし現在は、「原発は発電時に炭酸ガスは出しません」と修正しています。
原発を動かすには、ウラン鉱山からウランを採掘し、それを製錬・濃縮・加工して燃料にする工程や、生み出される「死の灰」を100万年にもわたって管理する仕事が必要です。それらすべてのプロセスで膨大な炭酸ガスが発生することは明らかです。
さらに私は、発電時にも炭酸ガスを出していると思います。原発は膨大なコンクリートと鉄の塊です。これを動かすためには膨大なエネルギーを必要としますから、当然炭酸ガスを出しています。科学的には、「核分裂反応は炭酸ガスを出しません」が正しい表現です。
何より温暖化対策を真剣に考えるのならば、膨大な温排水を出している原発こそ真っ先に停止すべきです。100万キロワットの原発の原子炉の中では、300万キロワット分のエネルギーが出ています。電気になっているのはたった3分の1で、残りの200万キロワット分のエネルギーは海に棄てています。
私の恩師である水戸巌さんは、「原子力発電という名前は正しくない。正しい名前は『海温め装置』だ」と指摘されました。私はこれを聞いて、目から鱗が落ちる思いがしました。確かに原発のエネルギーの3分の2は海に棄てられ、海を温めているのですから「海温め装置」と呼ぶのが正当です。
これは海の生物にとっては大迷惑な話です。100万キロワットの原発1基は、1秒間に70トンの海水を7℃温めます。東京の主要河川である荒川でも、1秒間に30〜40トンの流量だと思います。1基の原発は、荒川以上に巨大な川の水を7℃も温めて海に流しているのです。
日本にある55基の原発全体からは、1年間に1000億トンの温かい水が排出されます。日本全土に降る雨の量は1年間で6500億トンで、そのうち川に流れるのは4000億トンです。つまり原発は、毎年日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻しているのです。
温暖化対策を真剣に考えるなら、炭酸ガスを問題にする前に真っ先にこの「海温め装置」を止めるべきです。 |
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