現代意識潮流を探る
238452 9/23なんでや劇場 (2)〜私権意識の成立構造
 
冨田彰男 ( 47 経営管理 ) 10/09/25 PM09 【印刷用へ
「私権意識の成立構造」図解リンク
【1】〜【3】は私権意識の起源である遊牧集団の社会、
【4】【5】は武力支配国家、
【5’】は近代の市場拡大国家の構造である。

私権の起源を解明するために、遊牧部族は極めて重要である。

・世界の四大文明は全て遊牧部族発の世界であり、
・かつ私有権の共認の原点であるという点でも、
・それ以前の単一集団(原始人類〜採取部族共同体)から最初に複層社会化したという点でも、
・母系制から父系制に転換したという点でも、
・現在世界を支配している民族の多くの出自が遊牧部族であるという点でも、
遊牧社会は私権社会の原型をすべて備えており、徹底的に研究されるべきである。学界でそれが行われないこと自体が騙しなのではないか?

【1】〜【3】遊牧部族における私有意識の成立構造

ここで重要なのは、自我発で私有権が共認されたのではなく、部族全体の富族強兵共認ができてはじめて私有権が共認されたということ。
物的欠乏と部族間の相対自我⇒富族強兵共認⇒その正当化観念⇒富の拡大欲求⇒略奪闘争と私有権。これが私権意識の原点である。

人類は洞窟の中で暮らしていたが、約1万年前、弓矢の発明によって地上に進出し栽培・牧畜によって人口が増え、部族間に緊張圧力が働くようになる。そこで比較的豊かだった採取部族は他部族と友好関係を構築するために相互に贈与をした。

これは好意を示すために貴重品を差し上げたものであり、私益目的の交易とは全く異なるものである。生活必需品の物々交換が市場の起源であるという話も経済学者の騙しであって、生存上の必需品を他部族に委ねる部族など存在しない。その様な物々交換は、市場(関係)がある程度日常的に存在する様にならない限り成立し得ない。現に採取部族の贈与ルートは無数かつ広範に存在していたことが実証されているが、交易であれば溜め込むor消費するわけだから、これだけ無数のルートで広範にやり取りされるはずがないのである。

それに対して、遊牧部族は元々狩猟や牧畜では食えなかったから遊牧に転じたわけで、一貫して食えなかった部族であり、物的欠乏の強さが遊牧部族において部族間の相対自我⇒富族強兵共認を成立せしめた背景にある。

遊牧部族は元々は牧畜集団だったが、乾燥化など自然環境の変化で食えなくなると、母集団(拠点集団)から斥候部隊を派遣することになった。斥候とは危険な課題なので男だけの集団である(これがそれまでの共同体集団と違う点)。生産力という点では一箇所に止まるよりも移動した方が有利であり、それ故、派遣部隊(男部隊)は次第に規模が大きくなり、移動距離も長くなり、滅多に母集団に帰ってこなくなる。そこで性の問題が発生する。母集団が帰ってきた時に女を供給していたが、移動距離が長くなると、派遣集団が母集団に「女をよこせ」と要求するようになり、こうして父系嫁取り婚を共認した史上初の父系集団が登場した。

そこでは、遊牧部族の生産手段である羊等は氏族の所有物となってゆき、さらには婚姻を通じて発生する婚資(婚姻料、娘の持参金)は氏族の共有物でさえなく、家族や個人の所有物となっていった。このように遊牧部族はかなり初期の段階から、私有権が共認された私権社会に転換している。
なお、氏族レベルの私有意識は婚姻制度とは関係なく成立するが(但し、父系嫁取り婚は氏族の自我・私有意識を大いに高めた)、個人レベルの私有権は、婚姻制度を媒介にしてはじめて成立する。

【4】【5】武力支配時代、私権闘争⇒身分闘争への先端収束

その後、約6000年前に乾燥化を契機としてイラン高原の遊牧部族が略奪闘争を始める。略奪闘争が玉突き的に伝播して、勝ち抜き戦の果てに成立したのが武力支配国家である。そこで各部族を統合するための統合機関(軍と官僚)と身分制度が形成されるが、この両者には違いがある。貴族という身分は、元々は各部族を服属させるために、その長に身分(爵位)を与えたのが始まりである。それに対して軍・官僚ははじめから中央お抱えの統合機関である。もちろん、力の弱い者は強い者に従うという力の序列原理で統合されている点は軍・官僚も服属部族も同じであり、共にその内部は身分序列で統合されている(注:私権闘争を制圧するのは力の原理しかなく、私権闘争を統合するのは序列原理しかない)。

@貴族や官僚という身分は私有権を包摂しており、かつ、身分は下層民に対する支配権という単なる私有権を超えた権力を持つが故に、武力支配国家における私有闘争は身分闘争へと先端収束してゆく。
Aそこで貴族たちは働かなくても生きていける特権を獲得するので必然的に堕落する。それでは国家を統合できないので、有能な人材を統合機関に登用するための試験制度(科挙etc)が導入されるが、結局は特権階級たちが独占し庶民には無縁な世界であった。

この@Aが武力支配国家に固有の私権闘争の特徴である。

【5’】市場拡大国家、世襲身分の残存と学歴身分の確立

個人間の私益獲得競争を活力源としたのが市場拡大社会だが、序列原理によってしか統合されない点は変わりがない。但し、私権闘争を推奨する市場社会では至る所で問題が発生するので、統合機関が肥大化し、貴族身分に代わって学歴身分が確立=共認されてゆく。

学校教育では「近代になって身分制度は解体された」と教えられるがトンデモナイ騙しである。未だに私有権も世襲制もそのままであり、世襲身分という権力の源泉部分はそのまま残存し続けている。私益競争の社会である以上、お金が有ると無いとでは大違いであり、お金があれば何でもできるが、お金がないと何もできない。しかもそれは世襲されている。これは身分社会そのものではないか。

そこに学歴身分が新たに加わった。これは武力支配時代の試験制度から登場したものだが、近代までは試験制度で特権を獲得する者は少数であった。ところが、'80年頃大学進学率が50%を超えた頃から学歴身分が絶対化してゆく。そして、東大・京大卒が学者・法曹・官僚・マスコミ人となって暴走を重ねているのが現在である。

まとめると、
@私権意識の成立過程は、
緊張圧力と物的欠乏⇒富族強兵共認⇒私有権の共認⇒身分序列⇒学歴身分。
A物的私有を求める意識と身分を求める意識を総称して私権意識と言う。
B私権意識は外圧(部族間闘争)と自我だけではなく、私有権や身分制の共認といった社会共認によって成立している。そしてその正当化観念によって私権欠乏(私権意識)が強化されている。
以上が、私権意識の成立構造である。
 
 
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