法曹・官憲・役人こそ、社会閉塞の黒幕
236045 歴史に学ぶ 〜江戸の武士と現代の官僚の暗い共通点〜
 
やまと 10/08/11 PM10 【印刷用へ
好況不況の波は江戸時代にもあって、ほとんどの藩が財政難に陥っていたが、260年もの間、どの藩も年貢の大幅引き上げができなかった。
その理由として堺屋太一は「武士が軍事力を持っていなかった」ことをあげている。戦国時代の武士は軍人だったが、寛永年間(1624−44)以降になると、武士が軍人として行動することがなくなった。つまり、武力を持たない公務員となったというのである。

このことは、江戸時代の武士階級の性格を決定づけることになった。
幕藩体制下で武士階級は公務員となり、上級武士(旗本他)は官僚化した。この新たな身分の創設がその後の日本社会を良くも悪くも左右する。

江戸時代の武士と現代の官僚はよく似ている。元禄時代などの好況期には市中の民間人のほうが羽振りがよく、公務員は相対的に貧困化し、卑屈になっていく。それが不況期になると元気を取り戻して、時として「改革」という大義名分を掲げて「暴走」するのである。


堺屋太一「歴史の使い方」本文より引用
*********************************
徳川幕府は大阪の陣(一六一四−一五)が終わると、各藩に武装縮小を命令し、それが実現すると自らも軍備を減らした。このため、ついには警察力以上の武力は持たない非武装国家となったのである。

江戸時代にも、全国各地で一揆はあったが、武士が軍事行動で弾圧した例はほとんどない。大体が一揆の衆と交渉して、譲歩と脅迫で一揆農民の分裂を待った。結果としては問題を起こした奉行と一揆の首謀者の双方を、喧嘩両成敗という形で処刑することで納得させるのが常であった。

これでは年貢の大幅引き上げなどできるはずがない。経済が成長し、文化が華やかになると、武士は貧困化する。だから不況と弾圧で世の中全体が暗くなるのを喜んだのだ。

実はこれと同じことが今日の官僚にもある。バブル景気の頃には、「できの悪い」不動産屋や建設業者の豪遊振りをキャリア官僚たちはうらやましく眺めていた。中にはバブル成金の接待を喜んで受けたものまでいる。ところが、不況に陥った今は大いにご機嫌、「やっぱり高校時代から受験勉強してきたわれわれが偉かったのだ」と言い合っている。時代が変わっても人間性は同じなのである。


支配階級のはずの武士たちは貧困化が続いても、享保や天明のころには不況と弾圧で相対的地位が回復するのを喜ぶ気力があった。ところが十九世紀に入り、文化文政の華やかな時期を経験すると、それもむなしく思えるようになっていた。さりとて、不況政策以外に武士の相対的地位を回復する知恵もない。そんな中では、領地を幕府に返上して隠居したい、という殿様も出たほどだ。

幕末の世相を考える上で、まず大事なのは経済が一八二〇年からコンドラチェフ波動の長期下降局面に入っていたことだ。特に一八三二年から六年間も続いた天保の大飢饉は深刻で、寒害にあった東北地方はもちろん、全国商品流通が止まったことで「天下の台所」大坂も大不況に陥り、人口は激減した。「大塩平八郎の乱」(一八三七年)はその現れである。

幕府は水野忠邦を老中首座にして「天保の改革」を試みたが、わずか2年で失脚する。すでに幕府には安定社会を維持しようという意欲が失われていたのだ。このため、黒船の発した「進歩」を正義とするメッセージに共鳴する者も多かった。
*********************************

※「コンドラチェフ波動」:約50〜60年で繰り返す好不況の波(景気循環)。
 
 
  この記事は 230596 に対する返信です。
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_236045

 この記事に対する返信とトラックバック
「本格追求シリーズ3 共同体社会に学ぶ子育て」14 近世農村の貰子、捨子 「共同体社会と人類婚姻史」 10/10/01 PM07
238553 実現されなかった龍馬の希望 匿名希望 10/09/27 PM07
236394 歴史に学ぶ 〜旧観念支配が生む「総論賛成各論反対」という詭弁〜 やまと 10/08/18 AM10

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp