国家の支配構造と私権原理
227010 徴税制度によって市場の基盤が出来上がる
 
小暮 勇午 ( 32 路上人 ) 10/02/23 AM00 【印刷用へ
■生産物が集約され、市場の基盤が出来上がる

中央から地方へと広がる神社ネットワーク、あるいは徴税システムが整備され、中央のみならず地方諸国(の倉)にも、一定の生産物が蓄積されていく。神社や諸国の倉に貯蔵された生産物=米は、「貸し出される」ようになった。これが『出挙』と呼ばれるものである。

最初に獲れた初穂は神に捧げられ、神聖な蔵に貯蔵される。この蔵の初穂は、次の年、神聖な種籾として農民に貸し出される。収穫期が来ると、農民は蔵から借りた種籾に、若干の神へのお礼の利稲(りとう:利息の稲)をつけて蔵に戻す。この循環が出挙の基本的な原理となる。

律令国家はこれを国家の制度に定着させ、公出挙と呼ばれる。国衙の蔵に納められた租稲(そとう)が元本になったと考えられており、これを春に農民に貸し付け、秋に利稲を付けて蔵に返される。このような初期金融行為が神のものの貸与、農業生産を外界とした神への返礼として成立していた。

(※田租(でんそ)と出挙(すいこ)とを合わせて正税と呼ばれる。
田租とは、税金の一種で、口分田の場合は1段につき2束2把というのがもともとの規定で、大まかに言うと収穫高の約3%。
また、出挙は一種の高利貸しで、お金ではなく、稲を貸し付ける。だいたい春と夏の2回、頴稲という穂首刈りした稲を種もみ用に貸し付け、秋の収穫の時に利息分の稲と合わせて収納するというかたちになる。田租のほうは稲穂からはずした稲穀のかたちにして倉に蓄積していく。その倉がいっぱいになると封をした不動倉として、例えば飢饉が起きた時に出して使用するが、もっぱら蓄積されていく。一方、出挙のほうは頴稲のかたちで運営され、その利稲でもって地方の財源にあててられた。)



神社ネットワークから、律令制度下での徴税制度の発達、及びそれらの拠点ごとに富が蓄積され、市場発達の基盤が整った。

西欧や中国では、大規模な戦争によって武力支配国家が成立し、生産財が奪われることで、転覆不可能なほどの圧倒的な富の差が生まれた。日本では大規模な戦争が無かった代わりに強力な中央集権国家が成立した訳ではなかったが、「神社・神道」を利用した緩やかな律令制度により富の蓄積と差異が生まれたことになる。
 
 
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