試験・身分制度の根深い害
222848 「遊び」と「労働」の区別のない世界
 
田中直人 ( 壮年 あれこれ兼業 ) 09/12/28 AM09 【印刷用へ
世界には「遊び」と「労働」を区分する必要のない人々がいます。
イヌイットの遊びリンクより、その事例を紹介したいと思います。
(引用、一部編集させていただきました。)

【引用開始】
《イヌイットの遊び》
極北民族であるイヌイットほど遊び好きな人々はほかにないような気がする。猟の途中でも、簗で魚をとっている間でも、テントでくつろいでいるときでも、老若男女いつでもどこでも遊びに興じてしまう。
 
ここで注意すべきは、イヌイットには「遊び」と「労働」という観念を区別する思想はなかったことである。それぞれの遊びやゲームには名前があったが、これは「遊び」だ、これは「労働」だという区分はなかった。私たちが遊びと分類する行動は、イヌイットにとって生きていく上、心理的な対応と行動の技術の学習・向上を促進させるとともに、社会生活が円満に営まれるための役割を果たしていた。つまり、イヌイットの「遊び」とそのほかの行動は表裏一体の関係にあり、遊びは生き抜く術の予行演習であった。

《イヌイットの遊びの特徴》
@イヌイット社会における遊びは計画的に行なわれるのではなく、状況次第で即興的に行なわれる。ハンターがカリブー猟の途中、一休みをしているときに紐を取り出してあやとりをすることはめずらしくない。あるいは、キャンプで皆がくつろいでいるとき、誰ともなく腕相撲をはじめたり、テントの外でカラスやカモメを目がけて石を投げたりするのである。また、遊んでいると思えば、ゲームを突然にやめて漁に出かける。いうまでもなく、子どもはいつも遊んでいる。橇に乗って人形遊びをしたり、大人に作ってもらったおもちゃの道具や本物の道具を使ってごっこ遊びにうつつをぬかしている。
 
Aイヌイットの遊びには専用の用具は少なく、身のまわりのものを応用して遊ぶことが多い。野球をする場合、海岸に打ちあげられた流木やツンドラにころがっているカリブーの角をバットに、皮の切れ端にコケをつめて皮紐でしばったボールを手早くこしらえて遊びだす。キャンプを移せば、作った遊び用具を放置して、次の試合にまた作るのである。

Bイヌイットの社会ではルールを重視するよりも楽しく遊ぶことが大切だとされている。そのためか、参加者やチーム・メンバーを決める基準はなく、誰でも飛び入りして参加できる。勝ち負けはあるものの、遊びは皆が楽しく参加するものという前提がある。ただし、縄跳びやパス・カットのような乱暴なゲームは子どもと大人が別れて行なうことになっている。
 
C力比べのゲームが多いのもイヌイット遊びの特徴の一つである。成人の男性が参加する87の遊びのうち、53(60%)は力を重視する遊びである。しかし、イヌイットの力比べは必ずしも馬鹿力を発揮するものとは限らない。地面においた重さ60〜80キロの石を移す石運びや重量挙げのように、奮発力を要するゲームは少数あるが、正座跳び、高蹴り、「鉄棒」・リング体操、片手の腕立て伏せの姿勢になり反対の手で回す紐を跳ぶ片手紐まわし跳びのように、多くのゲームでは力のほかに集中力と運動神経が必要である。イヌイット社会のゲームでは力と雅、機知と詩趣、自信と自重、器用さと敏捷さをもちあわせた精神が高く評価され、力ずくで相手をぶったおすという心構えはあさましいとされる。
 
D幼児・児童(思春期前の子ども)の34の遊びは3つの種類に分けることができる。一つは、役割学習に関連する、大人の活動をまねるごっこ遊びである。人形を使う赤ちゃんごっこ(女子)、小さな雪の家の中での、地面にあおむけに寝る子の周りに石を並べる墓遊び(男女)、地面に石を並べて、簗で魚をとる漁撈ごっこ(男子)、角を頭にかざしている子を追いかける狩猟ごっこ(男子)、ミニチュアの橇を数人の子どもが引くごっこなど、大人のすることすべてが子どものまねるごっこ遊びとなる。ごっこ遊びではないが、絵話や昔話も子どもに社会のあり方を教える役割を果たしている。
 
Eいわゆる神聖な遊びはないが、儀礼や精神生活に関するいくつかの遊びがイヌイット文化で知られている。一つは綱引きである。アラスカやバフィン島では、キャンプ全員が2つの陣営に分かれ、豊猟を象徴する冬の「ライチョウ組」と、 不猟を示唆する夏の「カモ組」が対抗して、「ライチョウ組」が勝てば飢餓のない一年がつづき、「カモ組」が勝てば食料不足の一年になるとされる。
あやとりにも超自然的な力があるとされている地方がある。たとえば、太陽が照っている間にあやとりをすれば、天候が不順になったり、悪霊が現われると恐れられている。また、あやとりで作った模様が守護霊になることがアラスカで報告されている。ハドソン湾の北のイグルーリック地方では、初冬に沈んでいく太陽が次の春にもどるよう、太陽をあやとりの網に閉じこめるというものもある。【引用ここまで】

イヌイットにとって「遊び」とは「真似る」=「まなぶ」ことなのだと思います。だからこそ、老若男女、いくつになっても「遊ぶ」ことをやめることはない。
「遊びは生き抜く術の予行演習」。
これが「遊び」の本質ではないでしょうか?
 
 
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