国家の支配構造と私権原理
217733 日本の古代官僚制の歴史(4)〜奈良時代の官僚制度
 
田野健 HP ( 49 設計業 ) 09/10/21 AM00 【印刷用へ
奈良時代から平安時代にかけての日本の官僚制について押さえていきたい。

前投稿と同じく「日本の歴史」井上清著を参考にまとめてみます。

大化の改新以降、その後の法整備によって日本は氏族的連合支配から全住民を地域に従って行政的に組織し支配するという国家形態が作られた。それらを実現するために天皇制は権威化され神聖化絶対化されていった。国家において天皇は国土創造の神の子孫であり、アキツミカミすなわち「人間として現れている神」と言われる神的な権威であり、同時に全国土も人民も天皇の所有とした。
律令の条文には天皇の権限については何ら定められていないが、天皇は法を超越するものであり、天皇は国家そのものであるとみなされた。
現実の支配は、天皇から任命された官僚によって、法と機構を通じて実現される。この点から言えば律令国家「日本」は前代の氏姓貴族が各個にその氏人・部民を支配することをやめ、天皇を中枢としてみずからを統合し、一体となって全人民を支配する権力機構であった。

中央政府は天皇の祖先神々を祭り、神社を管理する神祀官と、一般国政を行う太政官の2官に分かれ、太政官には太政大臣の下、左大臣、右大臣があり、政務を総括しその下で行政は八省に分けて行われた。べつに官吏を監察する弾圧台その他の機関もある。
行政区割は京を除いて全国を60余の「国」に分け、国には守(かみ)以下4等の国司をおいて中央から4年間の任期をもって派遣され、管内の行政、裁判、軍事、警察の全権を握った。国はさらに「郡」に分けられ、長以下の役人(郡司)は以前の国造級の豪族の中から任命された。郡内の住民は五十戸毎に「里」に編成され、その中の有力戸主を里長とした。里は自然村落でもなければ、以前の氏族集団の延長でもなく、行政上の最低の単位として里長は国家権力の最末端の官吏にあたり、徴税、警察、戸籍作りの任にあたった。

国家機関の中枢である軍事機構には中央の衛門府、左右衛士府、左右兵衛府と国ごとにおかれた軍団および筑紫におかれた大宰府があって21歳から60歳の公民男子は兵役の義務を課され、交替で兵役についた。軍事の主任務は対外防衛という大前提はあったが、実際には天皇制に対する叛乱の鎮圧にあった。最も反勢力にあった九州には現地民と方言が通じない東国の兵士を優先的に配し、監視防衛にあたった。

神的権威と絶対権力である天皇の権威と力を分け与えられた太政大臣は実質的に人民の支配を行い、その下の中央の官吏および国司は大化の改新以降の中央貴族が、郡司は同じく前代の地方豪族が独占した。かくして中央貴族、地方豪族の個々人には栄枯盛衰はあっても、階級全体としてみれば彼らは支配階級としての地位と財産を形を変えて保持しつづけた。

律令制は唐の体制を全面的に真似ながら、唐制のように試験によって全国民の中から選抜する科挙制を開かず、前代の支配階級、身分に官吏を独占させている点に唐制との重大なちがいがある。大化の改新が唐のように前王朝を実力で打倒して新王朝を開いたものではなく、旧国家の君主と支配者が彼らの国家形態を一新したにすぎないことへの必然のなりゆきであった。
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中国の科挙は既存の為政者の息のかかった役人を一掃する手法として作り出されたが日本においては天皇という絶対存在を固定したことにより、実質の為政者が変わっても官吏を変える必要はなかった。その点において、日本の官僚制と中国のそれとは最初の目的からして似て非なる存在であったと思われる。日本の官僚の特殊性を考える上でも、天皇制という制度の特異性を念頭に入れておく必要がある。
 
 
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