(211635の続き)
◆ヨーロッパ貴族の勃興
この十字軍や騎士団に”投資”していたのが、それまでの略奪と地中海交易で富を蓄えていた貴族達であった。十字軍の略奪及びテンプル騎士団の東方交易により、十字軍や騎士団に投資していた貴族達は、数十倍の利益を得た。
騎士団を通じて作り上げた商業ネットワークを基盤に財を成していった貴族達は、神聖ローマ帝国皇帝への不満を募らせて行く。当時の貴族達は、神聖ローマ帝国の皇帝による絶大な権力の支配下にあったが、貴族達は金と軍事力があれば、皇帝などいなくても自分で独立できると考え始め、各地で皇帝に対する闘争を引き起こし、時には異民族であるトルコ軍を招き入れることさえ行った。
この絶え間ない戦争を遂行するため、皇帝は領土を担保に多額の金を借り入れた。皇帝に金を貸すのは「金貸し」だが、その金貸しには貴族達が金を貸している。つまり、貴族が間接的に皇帝にお金を貸しているという構図が出来上がっていた。その後も戦費が膨張し、皇帝が借金の返済能力を失った結果、担保であった土地は貴族達の所有物となる。こうして貴族達が所有することになった土地に皇帝の権限が及ばなくなり、ジェノヴァ、バーゼルなどが都市国家として独立して行く。
◆スイス都市国家の成立
1200年前後のスイスは産業地帯であり、鉄砲、刀等の精密機械業、金属加工業が発達し、山間部で火薬原料も採掘された。そこに、ヨーロッパ中で商業ネットワークを構築していた騎士団やヴェネチアで富を蓄えた金融家が金融技術と共に移住していた。
皇帝に反逆した貴族達は、この兵器と富と産業の揃ったスイスに結集した。当初はチューリッヒなどわずか35都市ほどだったが、やがてこれらの都市が同盟を結び、国家を形成していく。これが現代まで続く金融国家、マネーロンダリング天国スイスの起源であり、世界を支配する勢力となった所以である。 |
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