実現論を塗り重ねてゆく
202844 『凡才の集団は孤高の天才に勝る』〜素人の創造力
 
岩井裕介 ( 37 再開発プランナー ) 09/03/25 AM01 【印刷用へ
『凡才の集団は孤高の天才に勝る−−「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア』
キース・ソーヤー著
金子 宣子(翻訳)
リンク 

田中優子氏の書評
毎日新聞 2009年3月22日 東京朝刊
リンク より転載。
*****************************************
◇日本の伝統とも共通する創造力の秘密

 ビジネス書の書棚には近づかない方なのだが、この本の題名を見て思わず手にとった。それは私が、江戸時代の都市部で展開していた「連(れん)」というものに関心を持ち続けてきたからである。連は少人数の創造グループだ。江戸時代では浮世絵も解剖学書も落語も、このような組織から生まれた。個人の名前に帰されている様々なものも、「連」「会」「社」「座」「組」「講」「寄合」の中で練られたのである。

 私はこの創造性の秘密は、日本人固有のことではなく、人間の普遍的なありようではないのかと、常々考えていた。江戸時代では、個人が自分の業績を声高に主張しなかったので、連による創造過程があからさまに見えるのではないだろうか。コーディネイターとして人と人をつなげながら自分の能力を発揮した人こそが、日本の文化史には残っている。

 さて本書は原題を「グループ・ジーニアス」という。著者は経営コンサルタントを長く経験し、企業にイノベーション(革新)の助言をすることを仕事にしてきた。同時に心理学博士で、そしてジャズピアニストだ。この組み合わせには納得。江戸の連はジャズのコラボレーションに酷似している、と私も考えてきたからだ。そういう著者であるから、本書には即興演劇集団がどのようなプロセスで芝居を作ってゆくのか、ジャズセッションはどういう過程をたどるのか、著者自身の詳細な記録に基づいて述べられている。それと全く同次元で、ポスト・イット(付せん)がどう生まれたか、ATMやモールス信号がどのように発明されたかを書いているのが面白い。そこから見えるのは、個人の発明だと思っていたものが、実は様々な人々からの情報提供と深い意見交換を契機にしているという事実である。また個人のレベルでは十中八九失敗であるものも、最終的には画期的な発明がなされている。失敗が新しい時代につながる理由こそ、コラボレーションの力なのだ。

 江戸の連には強力なリーダーがいない。町長や村長など「長」のつく組織は明治以降のものであって、町や村もピラミッド型組織にはなっていなかった。それは短所だと言われてきた。戦争をするには、なるほど短所であろう。しかし新しいアイデアや革新を起こすには、社員全員で即興的に対応する組織の方が、はるかに大きな業績を上げている。本書はブラジルのセムコ社やアメリカのゴア社の事例を挙げ、現場のことは現場で即時対応することや、規模を小さくとどめるために分割することに注目している。それが伝統的な日本の創造過程とあまりにも似ていることに驚く。

 本書で提唱しているのはコラボレーション・ウェブ(蜘蛛(くも)の巣状の網の目)である。その基本の一つが会話だ。事例として日本の大学生の会話も収録されている。そこに見える間接的な言い回しが、可能性を引き出し創造性につながるものとされている。日本語(人)の曖昧(あいまい)さと言われるものが、実はコラボレーションの大事な要因なのだ。相手の話をじっと聞き、それを自分の考えと連ねることによって、新たな地平に導く可能性があるからだ。これは相手まかせではできない。能動的な姿勢をもっていてこそできることである。人を受け容(い)れるとは能動的な行為なのだ。

 江戸時代までの日本人は、集団的なのではなく連的であった。本書もピラミッド型集団とコラボレーションとの違いを明確に区別している。こういう本を読んで、日本のコラボレーションの伝統と力量に、今こそ注目すべきだ。
*****************************************
(引用以上)


6590 素人の社会活動19 素人と創造
●本当の創造は、素人が担ってきた(言葉を作ったのも、火を使ったのも、弓矢や舟を作ったのも、栽培や飼育を始めたのも、銅や鉄を精錬したのも、また壁画を描いたり、工芸品を作ってきたのも素人である)。真に偉大な思想(統合観念)を創ったのも素人であって、専門の神官や学者が、真に新しい価値を作り出した例は極めて少ない。実現論も又、素人が創ったものである。

7453 素人の社会活動34 創造(=探求)のパラダイム転換
●現実の課題があって、はじめて探求(創造)が始まる。そしてそこに先駆者や先覚者がいたとしても、その探求過程は、一貫して共認過程であり、皆との期待と応望の交信(やりとり)の中から全ては生み出される。

7673 素人の社会活動35 素人こそ創造者(論点の整理)
●実現の時代、現実を対象化する為には、現実の真っ只中に居なければならない。現実の真っ只中に居る者、それこそが素人であり、従って、素人こそ真の創造者である。
●潜在思念こそ探求(創造)の生命であり、潜在思念(⇒とその行動)の共認こそ共認の生命である。
●従って(直ちに行動できない現在)、素人の探求過程での潜在思念(⇒とその表出)のやりとりこそ、創造の漁場(狩場)であり、その場こそがるいネット(の会議室)である。
 
 
  この記事は 202792 に対する返信です。
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_202844

 この記事に対する返信とトラックバック
261854 思いを共有すれば仕事のできる人の集団ができる! 宮田将司 12/03/02 AM01
258775 実現に向けて動き出すと、集団の中枢(中心)にどんどん近づいていく 小暮 勇午 11/11/18 PM03
240758 自主管理共同体の可能性1:ブラジル・セムコ社 center_axis 10/11/14 PM09
214151 集団の「長」ってなに? 09/09/02 PM06
205223 小さな天才たちよ、未来を築け☆ hey 09/04/25 PM11
203610 「凡才の集団」の強みを最大限発揮できるのが「共同体経営」 清水昌広 09/04/04 PM11
203019 「日本に永住したいくらいだ」〜欧米人から見た素敵な江戸時代の日本 猛獣王S 09/03/27 PM11
202977 「アワセ・キソイ・ソロエ」という日本の方法 橋口健一 09/03/27 AM01

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp