市場は環境を守れない、社会を統合できない
198868 環境問題を引き起こす思想的な欠陥 2
 
本田真吾 HP ( 壮年 建築家 ) 09/02/02 PM10 【印刷用へ
18世紀。市場社会の黎明期は、万人の私権追求の可能性が開くと同時に、それを後押しする近代思想も生まれてきた。

ここでは、神から人間への判断主体の転換という意味での人間中心主義。私権主体としての個人の絶対視。その実現のための『(判断主体としての)人間』『(私権主体としての)個人』『(私権行使の)自由』『(それらの要求行為を正当化する)権利』という観念が登場する。

そして近代科学も、この潮流の中で生まれてくる。かつて、神の理性でしか判断できなかった人間が、神を介さずとも自力で判断できるというように、人間の理性が肯定視されるようになる。これらを推し進めたのが、人間の観察や判断能力よって世界は認識できると説いた啓蒙思想だ。

これは、近代科学が発展する思想的な原動力ではあるが、大きな欠陥も孕んでいる。このとき、一見神から人間に判断主体が転換し、近代科学はキリスト教の影響から逃れたように見えた。しかしキリスト教の、自然は人間が利用・加工・支配するためにあるという価値判断はそのまま引き継がれている。

だから、自然の一部としての人間が、自然環境全体を考えながら、社会を制御統合して行く事は捨象される。そして、(私権主体としての)人間によって都合のいい偏った科学や技術の追求だけが続いてきた。これが、環境破壊に至る思想面での問題点だ。また、これは市場の要請にも見事に合致している。

これらの思考法は、本来自然の一部としての人間という視点から自然に同化し、その法則性を見出すという同化思考とは正反対だ。それは、人類や自然の全体性を捨象して、自分(私権)に都合にいい事実だけ対象化し、それが全てと誤認する。その結果、対象世界の認識は、私権に都合のいい事実の拡張適用によって異化さていく。

この異化思考が、環境問題の引き起こす思想的な欠陥である。
 
 
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