企業を共同体化するには?
192357 市場原理から脱却した兼業農企業が“万人が農業を担う社会”を実現する
 
西村秀彦 ( 33 技術者 ) 08/11/15 PM10 【印刷用へ
食糧生産は人類にとって絶対に必要な課題であり、万人が農業という生産課題を担っていく社会は、食の安全と共に生産過程における共認充足も得られる可能性を感じます。

ただ、ひとりひとりが兼業農家として取り組む形態だと、もう一つの仕事との調整が困難になるケースも多分に想像され、なかなか実現しないようにも思います。

その問題は、一個人(家庭)ではなく、企業集団が兼業農企業として取り組むことで突破できるのではないでしょうか。


実際、市場縮小で逆境に立たされた地方の建設会社が、企業として農業に取り組んで、軌道に乗り始めている事例もあります。

///////引用開始////////
 松山市に本拠を置く愛亀は愛媛県を中心に舗装業を手がける地方建設会社である。売上高は36億円(2008年3月期)。無借金経営で自己資本比率は80%を超えている。この愛亀、実は50ヘクタールの水田でコメを作るコメ農家でもある。その生産量は年120トンに達する(2008年産の見込み)。

 なぜ舗装会社が農業なのか。西山社長の広げた巻物にその解がある。

 愛亀が農業に参入したのは2000年のことだ。1995年をピークに公共事業費は減少の一途をたどる。舗装が本業の愛亀にとって、公共事業の縮小は死活問題である。工事が減れば、舗装の技術を持つ従業員の雇用を維持できない。

 建設会社の強さの源泉は高い技能を持つ従業員にある。淘汰の時代を生き残り、競争力を高めるには、技能を持つ人々を自社に抱えておく必要がある。「技能者を温存するにはどうすればよいか」。2000年に社長を継いだ西山氏は、農業生産法人「あぐり」の設立を決断した。

 西山社長がコメに目をつけたのにはわけがあった。それは、舗装作業と農作業の繁閑がうまくずれるためだ。

 舗装の仕事は国や地方自治体が発注する公共事業が多い。国や自治体は4月から新年度が始まるが、実際の工事は秋から3月にかけてがほとんどだ。それに対してコメ作り。水田の代掻きは5月上旬、田植えは5月下旬、稲刈りは9月末である。舗装工事とコメ作りは作業時期が重ならない。工事がない時期は農作業を、農閑期には工事にと、従業員を効率的に配置できる。

 もちろん、繁閑のずれだけが理由ではない。農業には経営という発想が希薄。そこに、建設現場で培ったノウハウを持ち込めば、競争力のあるコメを作ることができると考えたからだ。

 「精密農業」。IT(情報技術)やデータ分析を駆使したあぐりのコメ作りを西山社長はこう呼ぶ。この精密農業の代表が、センサーを用いた土壌管理である。水田にセンサーを入れ、窒素量や炭素量、電気伝導度、pH値などを計測し、データを集める。

 窒素や炭素の量が把握できれば、水田に投入する肥料の量を調整することができる。水分量にばらつきがあれば、水田の高低差をなくすため、土をならす必要があるだろう。pH値が極端にどちらかに振れていれば、水田を休ませるという選択肢も出てくる。こうした土壌に関する様々なデータを分析し、施肥や作付け、水質管理に生かしていく。

 水田は1枚ごとにコンディションが異なる。土壌分析を徹底的に行うのは、水田ごとの品質のばらつきを抑えるためだ。そして、データ分析に長けた社員は社内にいる。「長年の経験を持つ生産者の方々にはかなわないが、彼らにできるだけ近づくために、科学的手法を取り入れている」と西山社長は言う。

〜中略〜
 今の時期、10人の作業員が水田に張り付いて作業している。彼らは普段は舗装で使う重機を動かしているオペレーターである。時期によって異なるが、10〜20人の作業員が代掻きや田植え、雑草刈り、稲刈りなど水田での作業に専念する。

 作業員は、近隣農家や住民との間に信頼関係を築くという役割も担う。「彼らはホントによくやってくれる」と西山社長が何度も口にするように、新参者が地域に受け入れられ、順調に規模を拡大し、さらに作ったコメが地元で売れているという背景には、従業員一人ひとりが地域とのコミュニケーションを大事にしてきたという面も大きい。

 「コメの収支はトントンで構わない」と西山社長は言い切る。愛亀はコメで儲けるために農業を始めたわけではない。コメを作っているのは、あくまで本業である舗装業を強化するため。舗装工事の閑散期の人件費が出れば、それで十分ということだ。

 公共事業が存分にあった時代は舗装だけで雇用を維持できた。だが、これからの時代に同じだけの公共事業を望むのはナンセンス。ならば、別の事業で繁閑の波を乗り切る――。西山社長の発想は至極真っ当である。

〜中略〜
 「インフラの町医者」。最近になって、愛亀はこの言葉をCI(コーポレートアイデンティティー)として使うようになった。道路舗装や下水管調査、リフォーム、プラント修理――。愛亀のビジネスは、地域の社会インフラと密接に関わっているものばかりだ。

 もっとも、ここで言うインフラは何も道路や橋などの構造物だけではない。農作物を生み出す田畑や山林もれっきとした社会資本である。視野を広げれば、建設会社の技能を生かす場面は数多くあるということだろう。

〜後略〜
「地方の雇用を守るか、建設会社の農業参入」日経ビジネスオンラインよりリンク
///////引用終了////////

市場縮小という圧力の中で、経済効率最優先という価値軸から脱却したことが、兼業農企業としての適応を可能にしています。
また、集団として取り組んでいることが、人員配置の弾力性を生み出し、持続性を高めているのだと思います。

農業を含め、地域(社会)に必要なものを供給していく企業が、これからの社会において必要とされ、生き残っていくことができるのだと思います。
 
 
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