温暖化問題が初めて世に広く知られるようになったのは'92年の「地球サミット」だが、このサミットを主導したモーリス・ストロングという人物は、カナダの巨大エネルギー会社の社長である。また、これに先立つ'87年にデンヴァーで開かれた「環境会議」の第4回大会では、モーリス・ストロングとも親交の深いエドマンド・ロスチャイルドが、「環境保護と持続可能な経済発展」というテーマで講演している。この大会にはデヴィッド・ロックフェラーやベイカー米財務長官も出席していたという(『世界を動かす人脈』中田安彦より)。
その後、'88年にIPCCが設立され、「地球サミット」そしてアル・ゴアの派手なプロパガンダへ繋がっていく。つまり、環境問題に先に目をつけたのは金貸しと政財界の人間であり、無論その関心は“環境保護”ではなく“持続可能な経済発展”の方にあっただろう。IPCC報告により、温暖化はCO2が主因と結論付けられ、'98年の「京都議定書」に結実する。当時のIPCC議長ロバート・ワトソンは、あの悪名高い「緑の革命」176646や食料貿易の自由化181178を推進した世界銀行の出身だ。
そして、温暖化の議論は現在、各国における排出権取引市場の拡大から、世界的な炭素本位制社会の確立へとテーマが移行しつつある。
「炭素本位制」とは、CO2排出枠の保有高が国家や企業の開発余力を決めるシステムだ。排出枠ゼロの国や企業がCO2を増加させる開発を行うには金を払わなければならない。金が無ければ借りるしかない。つまりこれは「CO2排出量という負債」からマネーを生み出すシステムである。既に今年の2月には「炭素銀行」なるものの設立構想が、英ブラウン首相とバローゾ欧州委員長との間で合意されている。リンク
こうしてみると、地球温暖化問題とは、中央銀行制度で不換紙幣と信用創造の仕組みが作られた時と同様に、また、金本位制が崩れドル本位制に移行した時と同様に、新たな金貸しシステムを構築するための布石だと考えられる。IPCCは、そんな彼らの目論みに“科学的”なお墨付きを与えるとともに“新システムに最適な環境指標”を絞り込むために設立され、その結果、選ばれたのがCO2だったというわけだ。このようなシナリオは、おそらくニクソン・ショックの段階から描かれていたと思われる。
だとすると、金貸しのターゲットが少し見えてくる。原子力派vs石油派、あるいは京都議定書で嵌められた日本という先進国同志の鍔迫り合いもさることながら、本命は中国、インド、そしてアフリカだろう。現在は議定書の削減義務を免れているこれらの巨大開発途上国の経済成長を制御しつつ、いずれは炭素本位制に巻き込むことで安定的な負債=マネーを発生させることこそ、ドルという打出の小槌を失いつつある金貸したちの次の延命策なのではないだろうか。 |
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