人類の起源と人類の拡散
15225 「互酬」か「再分配」か
 
三ヶ本万州夫 ( 壮年 講師 ) 01/11/02 PM01 【印刷用へ
 原始社会における経済の発達について、既存の民族学の視点がどうなっているか確認しておきます。狩猟採集民などの小集団で発生する「互酬」の原理(俗に言えば「助け合い」の経済)が第一段階で、物やサービスが無償でやりとりされますが、交換は等価ではないし、同時でもない。具体的には、アボリジニ社会ではカンガルーなどの獲物をだれかが手に入れると、村中で平等に分けます。「お返し」への期待が潜むことは否定しきれないでしょうが、基本的に人間関係・信頼関係に規定されており、お金とは無縁です。

 次がカナダ先住民やオセアニアの社会など、集団規模がやや大きくなった時に見られる「再分配経済」の段階です。富や労働力がボスのもとに集中→競争の激化→さらなる蓄財を目指しての戦争、遠方地域との交易→交易を円滑に行うための基準として、お金の原型(民族貨幣)の発生。以上のようなストーリーが考えられています。民族貨幣の例として、ヤップ島の巨大な石貨、オセアニアの貝貨と300羽以上の鳥の羽根を編みこんだ羽毛状貨幣などが知られています。岡本さんが紹介された南太平洋トロブリアンド島の「クラ貿易」ではビーズの首飾りと貝の腕輪がそれにあたります。これらは貨幣というより資本の提示・財力の誇示であり、地位や権威などの社会関係を引きずっているゆえ、いわゆる「お金」とは一線を画するというのです。

 この後、本格的な貨幣経済へと移行していくのですが、では縄文期はどの段階に当てはまるのか。小山修三説では第二の再分配経済の段階であり、ヒスイが民族貨幣だった可能性が高いというのです。しかし世界史的に見れば再分配経済は、主に初期農耕時代に該当します。そこから縄文農耕論が出てきます。イネの「栽培」があった可能性はもはや否定できないのですが、それをもって農耕の開始、と定義づけようとするのは強引だと思われます。これも「農耕が始まっていた」=「文化がそれだけ早く前進していた」という思い込みを持った論者に多く見られる発想でしょう。(実態としては、第一段階を基調としつつ、時期的、地域的には第二段階への移行の兆候が伺える、といったところでしょうか) 

 しかしそれ以前に、こうした既存の尺度(主に西洋世界史をバックに形成された)をそのまま縄文期に適用させるという姿勢に問題がないのか、一考を要すると思われます。既存の概念をすべて放棄すると議論が困難になるのは確かですが、専門家ほどそこに囚われすぎる傾向があります。縄文期は旧石器試合か、新石器時代か、はたまた中石器時代かという議論も同様で、無理に枠に入れようとしても歪みが生じるだけです。長期的展望で言えば、縄文期の独自性と普遍性を整理しなおしながら、全体像を再構成していくべきなのでしょうね。
 
 
 
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