人類の同類闘争と部族連合(戦争の起源)
14014 市場社会では、氏名の意味が希薄化する
 
石野潤 HP ( 46 教務開発 ) 01/10/19 PM06 【印刷用へ
>今、我々が名乗っている「氏名」は、実は『集団』と『個体』を表現しています。氏(うじ)と(な)ですね。前段の「うじ」は歴史的にも集団を表現するものです。○○一族ですね。次いで、「名(な)」はその集団内での『個体間』を意識する場合に、集団内で使われるものではないでしょうか。(13800村田さん)

親が子に何らかの期待を込めて名前を付けるように、本来、名前には集団の期待や規範を反映した何らかの意味があったのだろうと思われます。そして氏は同族や血縁などの集団性を表していますから、集団間の関係からその必要が生じたのでしょう。

インドネシアなどでは、氏姓も持たない人がかなり存在します。持っている人は「地方の名称、父親の名前、自分の名前」と並べるそうです。農業生産にとって「地方の名前」は「集団の名前」とほぼ同義かと思われます。「父親の名前」は出自を明らかにしているのかもしれません。

台湾は夫婦別姓ですが、子供には両方の姓をつける「冠姓」と言う習慣があるといいます。韓国では、祖先の発祥地を示す本貫と姓が同じ場合は結婚ができません。姓は出自を明確にするとともに、同族同士の婚姻を禁止した婚姻規範とも大きく関係しているようです。


また、源朝臣の前に冠される左馬頭は職名を示していますから、名前には集団内の役割を表す意味もあったのかもしれません。少なくとも私権時代には職制と身分を表す姓が登場します。

さらに、荘園制度によって所有した土地に名をつけ名田といいました。氏から分かれて独立すると、所有地の字名を家名とするようになります。集団を表す氏、職制や身分を表す姓、所有権を表す名字は、当時の社会統合のありようを反映しているとも、個々人の意識を統合しているとも言えるのではないかと思います。


名前は、古くは規範意識や期待の中身に直結し、氏姓とは集団や社会の統合と不可分な関係にあったのだと思われます。逆に、各時代の匿名性とは社会秩序からの逸脱や抜け駆け、略奪などの意図に貫かれているのかもしれません。

しかし、市場社会にいたって、集団がことごとく解体されてきたことは、氏における集団性の意味を失わせてしまいました。(核家族化はその血縁集団という意味を矮小化させ、個人主義はこれを正当化しました。)生産と生殖の分離は姓から役割の意味を失わせました。貧困の消滅以降、私権規範の解体は名前から規範意識と期待さえ失わせてしまいました。

明治時代、名字のなかった8割の庶民が姓を持つようになったのは、戸籍の整備のためであり、それは市場社会における徴税という秩序形成のためでしたが、庶民にとっては初めから氏姓の意味は希薄だったのかもしれません。そして、市場社会というのはすべての庶民に匿名の抜け駆け可能性を開いたともいえます。


今後、ネットにおける皆の期待や規範の形成が、改めて「実名」であることに重みのある意味を与えてくれるのかもしれません。社会変革や社会統合という皆が担う課題が、「実名」に新しい役割を与えてくれるのではないかと思います。
 
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