人類の起源と人類の拡散
127170 人類の拡散と観念機能の進化@〜猿人段階〜
 
西谷文宏 ( 29 建築設計 ) 06/08/01 AM10 【印刷用へ
先日のなんでや劇場「人類の拡散」に出席した。
今回、最大の気づきだったのは人類の拡散過程と、観念機能の進化は密接に関係していると言うこと。
今回のなんでや劇場の中で得られた認識に、調べたデータや事例を付け加えて、この拡散過程と観念機能の進化過程を整理してみる。

1.猿人段階(約700万年前〜200万年前(一部150万年前まで))
  (サヘラントロプス属→オロリン属→)
  アルディビテクス属(ラミダス猿人)→アウストラロピテクス属
  →パラントロプス属(絶滅)  

  脳容量平均   :約400cc前後=現生チンパンジー並
  石器の使用   :なし
  生息域と移動状況:アフリカ全域?
           (化石発掘は東〜南アフリカが中心) 
           アフリカ大陸からの移動は一切ない

 猿人段階では、観念機能上重要な前頭葉の発達度合いは低く、言語をつかさどるブローカー野も未発達であることから、言語能力はせいぜい現生チンパンジーレベル程度。石器も使用していないことから、観念機能はまだ獲得されていないと考えられる。

しかし、猿人段階でも知能発達=脳の進化は確実に起こっている。
事実、アウストラロピテクス・アファレンシス(400万〜300万年前)→アフリカヌス(300万〜250万年前)→パラントロプス・ボイセイ(250万年前〜150万年前)と時代が進むにつれて、平均脳容量が約380ccから500cc前後まで発達している。

この知能発達=脳進化の原因は大きく3つ考えられる。

1つは、歩行訓練における共認機能の発達。
 完全な2足歩行の形跡は、500万年前のラミダス猿人段階で確認されるが(サヘラントロプス属・オロリン属はまだナックルウォークに近い)当時の人類は言ってみれば「ヨチヨチ歩き」の段階で(それほど2足歩行はバランスが悪い)、日常的に歩行訓練を行っていたと考えられる。この直立歩行訓練の中で親和充足・解脱充足を得ることで、(猿時代に獲得した)共認機能を発達させて行った。

2つ目は、食生の肉食化(死肉食)。
 脳は大量のエネルギーを消費する為、栄養価の高い食生が必要不可欠になる。肉食は(肉体負荷が高い一方で)エネルギー量が高く、脳の発達の促進が可能になった。

3つ目は、遺伝子の変化。
 DNA解析の結果、約300万年前の猿人段階で全ての生物にセットされている「脳の発達を抑制する遺伝子」が欠損したことが解っている。(脳を発達させることは、出産負荷の増大、エネルギー負荷の増大など生命的負担が大きくなる為、発達を抑制する遺伝子が生物にはセットされている)この遺伝子が欠損したことで、本能的限界を超えて脳を発達させることが可能になった。

このように、猿人は観念機能の獲得には至っていないものの、後の観念機能獲得に繋がる脳進化・共認機能進化を図っていた。猿人段階は言わば「観念機能獲得の前準備段階」と言え、この猿人段階での知能発達の基礎があったからこそ、原人段階での観念機能獲得が可能になったと言っても過言ではない。

先述したように、脳の過度な発達は生物にとって負担が大きいが、人類(猿人)は、あえてこの危険な脳進化の道を選んだ。
実現論で語られているように、人類は「木から落ちた猿」であり、本能レベルでは全く外圧に対応できない最弱の生物だった(実現論1_6_01)。この逆境状況において可能性収束したのが、(本能ではなく)猿段階で獲得した共認機能の進化=知能の発達だったのである。逆に言えば、本能では全く適応できない逆境状況こそが、知能発達の道を開いたとも言える。
 
 
 
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