法曹・官憲・役人こそ、社会閉塞の黒幕
100838 『国債整理基金特別会計』という「飛ばし」会計
 
村田貞雄 ( 58 企画 ) 05/11/14 PM07 【印刷用へ
財務省が公表している資料から、「粉飾構造」をみてみたい。

最大の「やりくり会計」が、「国債整理基金特別会計」である。この会計は、一般会計と特別会計の借金(国債の発行と政府借入金)の全てが流入する。

国債を発行するのは、一般会計及び幾つかの特別会計であるが、発行された国債は、その会計年度に、整理基金特別会計に移し替えられる。(また、各特別会計の借入金も「国債整理基金特別会計」に移し替えられる。)

10兆円の10年国債を発行したら、10年後に「元利」償還の義務が国家に発生する。この10兆円を償還するには、毎年、元本の10分の一+金利分を、整理特別会計に積み立てていく必要がある。

しかし、償還基金の積み立て基準は、そうなっていない。
2年という短期国債であれ、20年という長期国債であれ、償還財源の積み立ては、60分の一で行う。つまり、国債という借金は60年で返済する。
具体的には、前年度の国債残高の1.6%を、一般会計から、「国債整理基金特別会計」へ「国債費」として繰り出す事にしている。(60分の一=1.6%では、60年で100%にならないが。)

つまり、国債整理基金に移された段階で、各年の歳入欠損を解消する「特例国債」(短期政策の為の国債)という、特殊条件が消え、60年という超長期の将来負担に、負債の「飛ばし」行為が堂々と行われている。

この「飛ばし」行為は、昭和60年の特例国債の借換債の発行解禁時に導入されている。

>60年償還ルール
>国債の償還を行うに当たって、その償還金には国債整理基金から支払う現金と借換債の発行による収入を充てますが、その割合をどの程度にするかについては、わが国では60年で現金償還を終えるという「60年償還ルール」の考え方に基いています。これは、戦後の国債発行に際して、建設国債の見合資産(つまり政府が公共事業などを通じて建設した建築物など)の平均的な効用発揮期間が概ね60年であることから、この期間内に現金償還を終了するという考え方で採用したものです。また、この考え方から、毎年度の定率繰り入れ率は、ほぼ60分の1に相当する100分の1.6とされています。
(財務省「日本国債ガイドブック2005年、頁38)

昭和50年に発行開始した「特例国債」(一般会計の歳入欠損)の本格的な償還が始まる昭和60年に、借金(負債)の超長期飛ばしの会計原理とその資金繰り実施である「借換債」の発行という、財政の禁じ手を導入してしまったのである。
実体物が残る「建設国債」の60年償還ルールと歳入欠損(経常費で消える借金である「特例国債」)の償還ルールは、素人でも別物と思うが、財務省の資料では、堂々と正当化している。

この60年償還ルールでは、一般会計の特例国債の発行額には、何の抑制圧力もかかってこない。2年国債や5年国債を発行するという事は、2年後、5年後に向け、その償還資金を手当てすることを意味するが、その関係を全然意識する必要がないのである。

因みに、平成17年度の「国債整理特別基金」の市中発行国債の予定額は、119.8兆円。その内訳は、20年・30年国債はわずか11兆円、10年・15年国債は34.4兆円、5年・2年国債が44.4兆円、1年未満の短期国債が約30兆円である。

既に、日本累積国債の管理は、俗にいう「自転車操業」の段階に確実に入っている。(確かに、2年・5年国債や短期国債の発行によって、金利負担の軽減になっている面はあるかもしれないが。)

この5年間の借換債の発行額(「自転車操業」のスピードともいえるもの)は以下の数字となる。

平成13年度:59.3兆円<国債総発行額は133兆円>
平成14年度:69.6兆円<同136兆円>
平成15年度:74.9兆円<同139兆円>
平成16年度:84.5兆円<同162兆円>
平成17年度:103.8兆円<同170兆円> (当初予算)

現在、国債引き受けは、低金利で順調にまわっているようである。(募集額に対し数倍の引き受け申し込みがある。)しかし、この資金循環にも「ゴマカシ」がある。日本銀行が行ってる「量的緩和策」(国債等を担保とした民間銀行への多大な資金供給策)の結果であろう。或いは、民間企業の資金需要の縮小の側面もある。

だから、地味なニュースではあるが、日本銀行の「量的緩和策」の転換(廃止)に対し、政府(財務省)が、凄く神経質に反応するのである。

最後に、参考になるブログ記事を一つ紹介しておきます。
青海波seigaiha_Urayasu_ppBlogさんの「衆議院選挙後で考え込む:国債残高 など公的債務の急増」
リンク

 
 
  この記事は 100553 に対する返信です。
 この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_100838

 この記事に対する返信とトラックバック
「財務省 40年国債の発行検討」〜2045年問題への苦肉の策〜 「Financial Journal」 06/12/11 AM00
国の借金は60年後に返せばいいんだ!!って、それで良いわけない! 「Financial Journal」 06/09/20 AM01
国の借金800兆、どうする!? 「新しい「農」のかたち」 05/12/06 PM01
特別会計を考えるための基礎データリンク集 「消費経済研究会」 05/11/21 PM07
石井紘基による特別会計の分析 「消費経済研究会」 05/11/15 PM07

  [戻る]  


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp