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363589 人間の言語の本質は音声言語@
 
キムナリ ( 24 福島県 会社員 ) 21/01/14 PM00 【印刷用へ
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日本での外国語教育は、漢文の受容以来、主に文章の理解を目指したものだった ことは周知のことです。最近でこそ「会話重視」「コミュニケーション重視」と 言われますが、学校教育に関する限りまだそれほど大きな成果を挙げているようでも ありません。エスペラントを学習する際にも、その影響で書き言葉を優先する傾向が 少なからず見受けられるかもしれません。

しかし、一つの言語に習熟するには音声を避けて通ることはできません。いや、 むしろ、音声なしでは文章の理解さえ不十分なものになる可能性があります。 人間の言語の本質は音声言語にあるからです。

ヒトは進化の途上で、直立二足歩行を始め、火や道具の使い方を覚え、 そして言語を獲得しました。これらはヒトをしてヒトたらしめている特徴ですが、 ここでいう「言語」は音声言語にほかなりません。文字の使用が文明の発達や 社会の営みにとって大きな役割を果たしていることは言うまでもありませんが、 これは音声言語から見れば二次的なものにすぎません。

ヒトの体は基本的には他の哺乳類動物と違いません。音声器官というものが もともと備わっているのではないのです。呼吸や食物の摂取といった、生命の 維持にとってより基本的な働きをする器官を音声言語を発するために転用したのです。 しかし、これによってヒトの体は音声言語を扱うのに非常に適した特徴をもつように なりました。大脳が特に発達したのはもちろんですが、物理的・生理的な音の 発出や受容に関してもそれが言えます。まず、ヒトは喉頭(のどぼとけに 覆われている部分)が下がっていて、その上の空間(咽頭)が広くなっています。 このことは、音を共鳴させて強めたり、音の通り道の形を変えることで共鳴の しかたを変えたりして、はっきりと区別できる多種多様な音を発するのに有利に 働きます。また、ヒトの耳は母音を識別するのに重要な周波数に対して特に 敏感であることが知られています。これはサルの耳がもっと高い周波数で 敏感なのに比べて特徴的です。

人間の言語の特徴の一つに高い生産性があります。つまり、ある言語の話者は その言語で新しいメッセージを作り出したり、受け取ったりすることができます。 例えば、この直前の文(「つまり、…できます。」)と全く同じ文をこれまでに 読んだことはきっとないでしょうが、文として受け取るに支障はなかったはずです。 日常会話でも、多くの文はこれまでに言ったことも聞いたこともない、 新しい文でしょう。理論的には、どの言語でも文の数は限りがないのです。これは、 動物のコミュニケーションと大きく異なります。ただし、実際の言語使用では、 定型的・半定型的なパターンが繰り返して現れることがあるのですが、 ここでは理論的な可能性について考えます。

さて、この高い生産性を可能にしているのは、人間の言語のもう一つの特徴である 分節性です。これは、メッセージがひとかたまりのものとしてあるのではなく、 いくつかの部分に分かれているということです。文はいくつかの単語が集まって できていますが、その単語はまたいくつかの音からできています。ところで、 一つの言語は、普通、数十種類の音しか利用していません。逆に見ると、 ごく少数の小部品を組み合わせて多数の中部品を作り、さらにそれを組み合わせて 無限の種類の製品を生み出すという、おもしろい仕組みになっているわけです。 そして、音声はこの小部品として非常に適しています。

言語音を発するのには、普通、肺から口(場合によっては鼻も)を通して出す 呼気を利用しています。呼吸はどのみち生命の維持のために必要ですから、 言語音を発するためのコストは低いと言うことができます。また、呼吸と同様に 言語音の発出も他の活動(例えば労働)と平行して行うことができます。音声言語は 新しいコミュニケーション手段を必要としたヒトにとってこの上なく都合が よかったのです。

つづく
 
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