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生物学を切開する
361942 ゲノム編集の落とし穴 〜“セントラルドグマ”が書き直される可能性も〜
 
立川久 ( 50代 ) 20/11/21 PM10 【印刷用へ
2020年のノーベル化学賞に「ゲノム編集」の研究者2名が選ばれるなど、ゲノム編集について幅広く期待されているようです。一方で、ゲノム編集の問題点について警鐘を鳴らす報告が、自らゲノム編集に携わる研究機関から出されています。

理化学研究所の報告(2016年12月26日)リンクより、以下転載します。
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ゲノム編集の落とし穴
−“セントラルドグマ”が書き直される可能性も−
 
要旨

理化学研究所(理研)バイオリソースセンター新規変異マウス研究開発チームの牧野茂開発研究員、権藤洋一チームリーダーらの研究チーム※は、マウス細胞を用いて、ゲノム編集技術[1]により目的とするフレームシフト変異[2]を導入したところ、想定外のタンパク質が翻訳[3]されるという現象を発見しました。

近年、ゲノムを自在に改変できるゲノム編集技術が、急速に発展普及しています。この技術は簡便で、これまでゲノム改変が困難であった生物種においても利用できることから、遺伝子機能を解明する基礎研究から医療応用まで、極めて広範囲にわたる生命科学研究において利用が進んでいます。将来は、ゲノムを自在に改変し遺伝子治療への扉を開くと期待されています。一方で、標的とする配列以外のゲノム領域に、意図しない突然変異が導入される問題(オフターゲット効果)には十分に注意が払われ、技術改良が進められています。

今回、研究チームは、ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9システム[4]」を用いてマウス細胞の形態形成に関わるGli3[5]という遺伝子の標的破壊(ノックアウト)[6]を行いました。その結果、11系統の変異Gli3マウス培養細胞株を樹立し、その中の8細胞株は父方由来と母方由来のGli3遺伝子が共に翻訳が妨げられるフレームシフト変異を持つことも分かりました。

ところが、樹立した株のうち6細胞株のタンパク質発現を確認したところ、6細胞株全てが、ほぼ全長のGLI3タンパク質を「定型外翻訳」[7]によって発現していました。この結果は、“ゲノム編集を行う場合、標的遺伝子の変異配列確認だけでなく、タンパク質発現まで確認することが重要であること”を示しています。さらに研究チームは、ゲノム編集実施前にノックアウトした遺伝子から予想外のタンパク質が発現するかどうか事前に確認できる「in vitro発現確認ベクター」[8]も報告し、その利用を呼びかけています。

本研究は、ゲノム編集利用にあたっての警鐘を鳴らすとともに、分子生物学の中心命題である“セントラルドグマ”[3]の重要なステップである「翻訳」開始について、全く新しい分子機構があることを強く示しています。

実際にフレームシフト変異によって定型外翻訳が生じて発症するヒト疾患[9]の報告もあり、そういった疾患の分子機構の解明につながる可能性があります。一方で、ヒトやマウスの全遺伝子の半分にはuORF[10]と呼ばれる配列があり“小さな定型外翻訳”によって発現制御されている可能性が近年示唆されています。本成果はセントラルドグマそのものにパラダイムシフトをもたらす可能性があります。

〜以下略〜
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