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健康と食と医
360253 21世紀病のほとんどが、腸内細菌の影響を受けている
 
本田真吾 HP ( 壮年 香川 建築家 ) 20/09/17 AM10 【印刷用へ
1. 腸内細菌叢が病気に関連している事例

アメリカのある研究者が、熱帯に動物調査に出かけ、ダニによる感染症に罹り、体も精神もずたずたになった。そこで、抗生物質を何か月のもの間、打ち続け、その症状が消えた。

しかし、数ヵか月後から、まったく別の重度の症状が出てきた。それは、胃腸弱、赤い発疹、日和見感染など多数で、まともに生活できるような状態ではなかった。様々な治療を試したが、病状は一向に改善しななかった。

そして、たまたまそのころ始まった、腸内細菌叢のサンプルの調査に応募して、自分のそれと健康な他者のそれを比較することが出来た。その結果、解ったことは、自分の腸内細菌叢は、健全な人のそれと異なる構成になっていたことだった。

そこで、糞便移植という、健全な人の腸内細菌叢を移植する治療法を試した結果大きく改善した。しかし、一旦壊れ切った細菌叢は、そう簡単には復帰せず、病状はよくなったりもとに戻ったりを繰り返しているという事例がある。

2. 腸内細菌と免疫の関係

腸管内部は、内なる外とも言え、腸管壁を通じで、栄養から菌まで様々な物質が体内に透過できる。よって、腸管壁の内側には外界とのバリアーとして、人間の免疫機能のかなりの部分を占める腸管免疫が存在する。そして、そこに生息する腸内細菌は、腸管免疫と協働して、免疫機能を更に精度よくしている。

例えば、無菌実験室で帝王切開して生まれた無菌マウスは、免疫が形成されず、無菌室以外ではすぐ死んでしまう。しかし、このマウスに少数の細菌を感染させると、単純ながら腸内細菌叢も形成され、ある程度の免疫機能も形成され、虚弱ながらも無菌室の外でも生きることが出来る。このように腸管免疫機能と腸内細菌叢とは密接な関係がある。

また、腸内細菌叢の異常な変化は、免疫暴走を引き起こす。21世紀病と呼ばれる、1型糖尿病や多発性硬化症(リンク)などの自己免疫疾患の原因である可能性が高く、これらは、サイトカインストリームとして現れる。

3. 腸内細菌と精神や行動との関係

自閉症患者の腸内細菌叢も健全な人と異なることが解っている。この患者に、健全な人間の糞便を移植すると改善したという報告がある。しかし、これも一過性で長続きしないため、更なる研究が続いている。

これ以外にも、冬虫夏草という、昆虫に寄生し最後は昆虫を食料にして成熟し、胞子をまき子孫を残していく菌類いるが、これらは、腸内感染の段階で昆虫の行動を支配し、胞子を撒きやすい位置に誘導して、昆虫を葉っぱにかみつかせ、適切な位置に固定させ、そのまま死なせる。このように、菌が宿主の行動を支配している事例が人間以外にもある。

4. 腸内細菌と肥満との関係

肥満は贅沢病としてしか認知されていないが、食べる量と運動量の関係での治療はほとんど効果がないことが解ってきた。栄養学そのものが間違っているので、当たり前といえば当たり前だが。ごく普通に食べ、運動しているだけでも体重が増えるというのが、1960年ごろから始まった21世紀病といわれる現象だ。

これも、抗生物質の影響による腸内細菌叢の変化との関連性が研究されている。家畜や養殖魚のエサや、病気の防止のため、大量の抗生物質が使用されている。

抗生物質は、その体重を10〜20%増やし、商品価値を上げる効果があるので、いまでも大量に使用されている。その抗生物質入りの食物を人間が摂取している。これで腸内細菌叢が変わり、抗生物質の体重増加作用により、肥満になる可能性が示唆されている。

腸内細菌と体重増の関係では、ニワムシクイという渡り鳥は、渡りの前のたった2週間で、体重を2倍強に増やすことが知られている。この時期に、昆虫食から果実食に一気かわる。おそらく、消化に関わる腸内細菌叢も変化しているのだろう。

しかし、食べる量は多少増えても、カロリー計算で運動した分を差し引いた残りで計算した、体重増加のための食料の量には足元にも及ばない。これも、渡りの前に腸内細菌叢が一時的に大きく変わり、渡りのための体重増加を成し遂げていると考えたほうが自然である。これも、腸内細菌叢と体重増が密接な関係にあることを示す事例だ。

5. 21世紀病のほとんどが、腸内細菌の影響を受けている。

このように、21世紀病のほとんどが、腸内細菌の影響を受けている。わかりやすい肥満も、運動せず食べるだけの、怠惰な中年の病気ではなく、すでに、幼少期からかなりの率で発症している。その他の病気もほぼ同じで、若年から発症している。

これを、それぞれの病気に対する対処療法で治療しても効果はないことは、論理的にも実態としても明らかだ。これからは、21世紀病という視点で、人工物質、とりわけ抗生物質の消費と腸内細菌叢の変化に注目した研究から、新しい知見を獲得していく必要がある。

参考
『あなたの体は9割が細菌』書籍
『多発性硬化症(MS)の進行・増悪に関連する腸内細菌叢・腸内環境の変化を解明(リンク)』
 
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