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生物学を切開する
358072 ウィルスが細胞にもぐりこみ感染した場合、キラーT細胞が細胞のアポトーシスを誘導する
 
麻丘東出 20/07/01 AM00 【印刷用へ
体内に病原体が侵入すると、食細胞の好中球とマクロファージが撃退する。しかし撃退しきれない時、樹状細胞がヘルパーT細胞を活性化し、活性化ヘルパーT細胞がサイトカインを放出してマクロファージを強力にして対応する。(357711
並行して、活性化ヘルパーT細胞が、B細胞をプラズマ細胞(抗体産生細胞)にして抗体を放出して対応する。(357854

それでも、細胞がウィルスに感染してしまうと対応できない。
ウィルスは、細胞にもぐりこんで、細胞の複製装置を借りて大量に複製する。そしてそれらがその細胞を飛び出し、次の細胞へと移っていき、細胞のウィルス感染を広げていく。
ウィルスが細胞に吸着できずに細胞外を漂っているときや、次の細胞へ移るために細胞外に出たときは食細胞と抗体が有効だが、細胞にもぐりこんで細胞が感染しているときは、抗体は細胞の中に入ることができず通用しない。
そのため、免疫システムは、細胞がウィルスに感染すると、「キラーT細胞」によって感染した細胞をまるごと破壊してしまう戦略をとる。

◆キラーT細胞の免疫システム
細胞質はつねにタンパク質がつくられたり壊されたりしていて、いつも大量のペプチドが存在する。そのペプチドを細胞の表面にある“お皿”のようなMHCクラス分子に乗せて提示する。
そのひとつ「MHCクラスU」分子は、樹状細胞のように抗原提示する細胞だけがもつお皿。それに対し、「MHCクラスT」分子は、身体のすべての細胞がもつお皿。
(※ゆえに、樹状細胞はMHCクラスTとUの両方をもつ)
細胞がウィルスに感染すると、MHCクラスTには、自己細胞由来のペプチドと病原体由来のペプチドの両方が混じることになる。(「クロスプレゼンテーション」)
それゆえ、ウィルスに感染しない時、体中の細胞の表面には、MHCクラスT分子に自己細胞由来のペプチドが乗ったものだけが提示され、免疫細胞に「わたしは正常な細胞です」という目印になる。逆に、MHCクラスTにウィルス由来のペプチドが乗っていれば「わたしは感染した細胞です」という目印になり、キラーT細胞はどの細胞を破壊すればいいかを認識する。

キラーT細胞の活性化は、ヘルパーT細胞の活性化と同様のメカニズムになる。違いは、活性化ヘルパーT細胞からサイトカインをあびる必要があること。
病原体を食べて活性化した樹状細胞は、リンパ節に移動して、ナイーブ・T細胞に抗原提示する。
樹状細胞のMHCクラスU分子と結合したナイーブ・ヘルパーT細胞が活性化ヘルパーT細胞になる。
樹状細胞のMHCクラスT分子と結合したナイーブ・キラーT細胞は、活性化ヘルパーT細胞からサイトカインを浴びることで、活性化キラーT細胞になる。

ウィルスに感染した細胞は、警報物質としてサイトカインを放出する。そのうち特にケモカインに誘導されて活性化キラーT細胞は抹消組織に行き、特殊なタンパク質を放出して感染細胞に穴をあけ、酵素を投入し、感染細胞に「アポトーシス」を誘導する。(※アポトーシスとは細胞の自殺とよばれる現象)
または、感染した細胞が出すアポトーシスのスィッチを活性化キラー細胞が押し、感染細胞にアポトーシスを誘導する。

◆ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の免疫システム
さらに、免疫システムには、活性化キラーT細胞でも対応できない場合の機能がある。
活性化キラー細胞が免疫として機能するには、感染細胞の表面にMHCクラスT分子が表面に出ていることが前提になる。
病原体のなかに、MHCクラスT分子に自らのペプチドを提示されたら感染細胞ごと殺されてしまうため、MHCクラスT分子を表面に出さないような工夫をする病原体が現れる。
そんなとき、自然免疫の「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」が活性化キラーT細胞と同様の方法で感染細胞を破壊する(アポトーシスの誘導)


■【整理】病原体が体内に侵入してからの免疫のはたらき(357854続き)

★初期対応の免疫
【T】病原体の侵入→自然免疫(食細胞)の好中球、次にマクロファージが活性化し撃退。

★(Tで撃退できない時)樹状細胞→活性化ヘルパーT細胞による免疫
【U−1】自然免疫の樹状細胞が、ナイーブT細胞に抗原提示(MHCクラスU+抗原ペプチド)。
【U−2】ナイーブヘルパーT細胞が、樹状細胞の「MHCクラスU+抗原ペプチド」に結合し、樹状細胞とヘルパ−T細胞の「補助刺激分子」も結合し、さらに樹状細胞が放出するサイトカインも浴びることで、活性化ヘルパーT細胞になって増殖。
【U−3】活性化ヘルパーT細胞がサイトカインを放出して、マクロファージをさらに活性化して強力にする。

★(Uと並行し)B細胞→抗体による免疫。
【V−1】ナイーブB細胞が、B細胞抗原認識受容体にくっついた抗原を食べて、先に誕生した活性化ヘルパーT細胞に抗原提示(MHCクラスU+抗原ペプチド)。
【V−2】活性化ヘルパーT細胞が、B細胞の「MHCクラスU+抗原ペプチド」に結合し、B細胞とヘルパーT細胞の「補助刺激分子」も結合し、さらに活性化ヘルパーT細胞が放出するサイトカインも浴びることで、B細胞は「プラズマ細胞」と呼ばれる抗体産生細胞となり抗体を放出。
【V−3】抗体による「中和」機能で、抗原(ウィルス)が細胞内に侵入することを食い止める。同時に「オプソニン」機能で、マクロファージの食機能を強力にする。
【V-4】中和とオプソニン化によって、抗体が抗原に結合したものをマクロファージが食べて処理する。

★(細胞が感染した時)キラーT細胞による免疫
【W−1】ナイーブ・キラーT細胞が、樹状細胞の「MHCクラスT+抗原ペプチド」に結合し、かつ活性化ヘルパーT細胞からサイトカインを浴びることで、活性化キラーT細胞になる。
【W−2】ウィルスに感染した細胞が放出するサイトカインのうち、特にケモカインに誘導されて活性化キラーT細胞は抹消組織の感染細胞にたどりつく。
【W−4】活性化キラー細胞は、特殊なタンパク質を放出して感染細胞に穴をあけ、酵素を投入し、感染細胞に「アポトーシス」を誘導する。
【W−5】補完的にナチュラルキラー細胞(NK細胞)がはたらく。


※参考文献:「新しい免疫入門」審良静男/黒崎知博 著
 
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358224 ヘルパーT細胞を起点とする3種類の免疫応答がバランスし、獲得免疫システムを構築 麻丘東出 20/07/06 PM11

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