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生物学を切開する
351920 代謝に必要な「膜輸送タンパク質」をもつウィルス
 
麻丘東出 19/12/15 AM00 【印刷用へ
351329>巨大なウイルス発見で、生物とウイルスの境界は曖昧になってきた>

ウィルスは「自ら代謝を行わない」、自ら代謝できず宿主に依存しないと生きていけないので生物ではないといわれる。
しかし、ヒトも生命活動に必要な20種類ほどのアミノ酸のうち9種はその合成系を欠いているか、あっても自己の維持に必要な量を作り出すことが出来ず、われわれヒトも必須アミノ酸を周囲の環境から摂取しないと生きていけない。
ヒトの腸内には10兆〜100兆個もの細菌が存在し、それら腸内細菌が持つ遺伝子の数は、ヒトゲノムにある遺伝子数の少なくとも100倍以上になる。この多量に存在する腸内細菌の力(遺伝情報)を借りて、ヒトは自身では保有していない代謝系によるアミノ酸、多糖類、ビタミンやテルペノイドなどの代謝物を作り出すことを可能としており、共生する細菌に依存している。

また、ウィルスは「タンパク質を合成するリボソームを持たない」から生物ではないといわれる。
しかし、例えば昆虫の細胞内共生菌の一種であるカルソネラ・ルディアイというキジラミの共生菌は、自己が保有する遺伝子だけではリボソームをつくることが出来ず、約2億年にわたり宿主にアミノ酸を提供し、宿主から炭水化物を得るという共生適応し続けている。
また、「ウィルスは生体膜におけるATP合成ができない」から生物ではないといわれる。
これも、例えばファイトプラズマという植物病原性細菌は、エネルギー合成の鍵酵素であるF型ATP合成酵素を失っており、宿主細胞に寄生して必要な代謝物の多くをそこから取り入れることで適応している。
「リボソームによるタンパク質合成」「生体膜におけるATP合成」といった生命にとって根源的に思える代謝経路であっても、一種の生物として単独でそれらを保有することは決して必須ではない。

現在、生命の起源は、単純な化合物が徐々に高分子化して誕生してきたとする「化学進化説」が最も有力な仮説として考えられているが、この前提に立てば、生命は物質から進化したことになり、物質と生命とは原則的に繋がっており、物質と生命の境界すら曖昧である。
そうであるならば、生命の初期においてはリボソームを持たないこともATPを作れないことも当然のことで、ウィルスと生物も繋がっており、その境界は曖昧である。

◆代謝に必要な「膜輸送タンパク質」をもつウィルス。
ウィルスは、固有の遺伝情報(ウィルスゲノム)からなる「核酸」を保有し、その核酸を「キャプシド」というタンパク質の集合体で包んで「ウィルス粒子」になっている。そして、そのウィルス粒子の外側を「エンベロープ」という脂質膜で包んでいる。
エンベロープは、宿主の細胞膜との同質性を利用して宿主細胞にスムーズに侵入するための役割をもつが、細胞膜と同じ“リン脂質膜”の構造である。

そして、巨大ウィルスに属するクロロウィルスは、クロレラなどの緑藻に感染するウィルスであるが、これらのウィルスではそのゲノムにたくさんの「膜輸送タンパク質(イオンチャンネルなどを含む)」がコードされていることが近年、明らかになった。
膜輸送タンパク質は、膜をまたぐ物質輸送を可能とする装置であり、必要なものを取り入れ不要なものを排出する。
クロロウィルスのキャプシド内の膜輸送タンパク質は、宿主に感染するための機能だと考えられているが、細胞性生物の「細胞膜」の機能そのものである。


※参照:「ウイルスは生きている」中屋敷 均 著
 
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