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生命原理・自然の摂理
350954 粘菌に見る生命の不可思議さ
 
玉田 聡 ( 32 栃木 会社員 ) 19/11/10 AM00 【印刷用へ
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○一夜にして動物から植物へ
粘菌は、土壌表層に広く分布しているユニークな生物です。成長期のアメーバ状単細胞は、周囲に食物(主にバクテリア)が豊富にある時は、貪欲に取り込みながら細胞分裂によって増殖していきます。やがて食べるものがなくなると(飢餓状態)、粘菌は一転して別の行動を取るようになります。
それまでバラバラに動き、ひたすら食べて増え続けていた粘菌たちは、どんどん一か所に集まりはじめ、多細胞体としてまとまるのです。やがて、10万〜50万個ぐらいの細胞からなる半球状の塊(マウンド)が形成されると、そこから角のような乳状突起が飛び出してきて、やがてナメクジのような姿で移動を開始するのです(これを移動体と呼びます)。移動体は多くの細胞から構成される多細胞体で、全体として見事に統括された形態形成と分化を実行します。

見事な協調動作に感心しますが、その細胞間の情報伝達に大きな役割を果たしているのが、「サイクリックAMP(cAMP)」という物質です。粘菌細胞が飢餓状態になった時にマウンドを作ろうと集合する際に、「ここに集まれ!」というシグナルになっているのもcAMPです。
やがて移動体は動くのを止めて、次なる形態へと変貌を遂げていきます。それが「子実体」と呼ばれるもので、細胞塊から柄がするすると伸び、先端に「胞子塊」がついています。少し前まではナメクジのように動き回っていたのに、今度はあきらかに植物の形に変化していくという驚き。しかも飢餓状態になってから、子実体が形成されるまでの時間は24時間程度なので、まさに「一夜にして動物から植物に変化」するのです。

○自らを犠牲にする利他行動
子実体の胞子塊からは、胞子が飛びだし、それが発芽。アメーバ状の姿に戻り、再び増殖を始めます。子実体の柄の部分はそのまま死んでしまいます。
 先に移動体は「多くの細胞から構成される多細胞体」だと説明しました。つまり胞子になって次の世代に生き残れる細胞と、柄になって死んでいく細胞があるわけで、その区別は既に移動体の段階で、はっきりと分かれています。その分かれ目は、飢餓状態に陥った時点で、細胞が細胞周期のどの段階にあるかによります。まったくの偶然で運命が分かれてしまうわけです。自らが生き残れないにも関わらず、移動体の一員として見事な協調動作で動いているのを見ていると、自然の残酷さを感じずにはいられません。最近では、その利他行動を解析するために分子生物学の方面から注目されるようになりました。
また粘菌はモデル生物としても重宝されています。モデル生物とは普遍的な生命現象の研究に用いられる生物のことで、粘菌の他に大腸菌や酵母、動物では線虫、ショウジョウバエ、マウス、植物ではシロイヌナズナなどがあります。
 粘菌の発生・分化のメカニズムはシンプルであり、しかも短時間で変化が観察できるという利点があります。ゲノムも解析済みで、遺伝子操作による結果も調べやすく、世界的に注目が集まっています。
 
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