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西欧科学は狂っている
346695 デカルトの自然観・物質観=「幾何学的延長そのものが物体の本性を形成する」から近代科学が始まった
 
北村浩司 ( 壮年 滋賀 広報 ) 19/06/11 PM09 【印刷用へ
現在の西洋科学の基礎を築いたのは、ガリレオ、デカルト、ニュートン等に代表される人物であるが、それは、大きな自然観・物質観の変容が伴うものであった。それまでの自然観は、全ての事物がそれ固有の「自然本性」(ピュシス)に沿って振る舞う、というものであった。地上の世界は土(地)、水、空気、火の4元素から構成され、それぞれの物質は熱・冷・湿・寒などの基本性質を持つ。また、4元素はそれぞれの自然本性的場所を目指して運動するとし、物質そのものに特性(意志)を認めた目的論的な説明であり、その意味で精霊信仰的な要素を残したものである。

それに対する批判の口火をまずガリレオが切る。彼は、「大きさ、形、数、運動」等を物体の「第一の実在性質」として認め、「匂い、味、音、色」等は第二性質として感覚主体の中にあるものとした。つまりアリストテレスのいう「熱・冷・湿・寒」は物体の基本的なあり方を示すものではなく、二次的な感覚的性質としたのである。この段階で既に数学的に処理可能な性質を第一性質、そうでないものを第二性質として考えていたと推測されるが、それを更に徹底したのがデカルトである。

彼は「明晰判明な認識」のみを真理とし、「物質すなわち普遍的に見られた物体の本性が、固い、重い、色その他何らかの仕方で感覚を刺激するものであることに存するのではなく、ただ長さ、幅、深さにおいて延長のあるものであることにのみ存することが覚知されるであろう」「幾何学的延長そのものが物体の本性を形成し、空間があるところには必ず物質がある」という世界観である。このようにしてアリストテレスの自然学の基礎を否定し、物質に能動性や生命原理を認めるルネサンス自然主義(魔術思想)を否定した。それは同時に、東ローマ帝国崩壊後ヨーロッパに流入した先進文明であった、ローマ文明や、イスラム文明の基礎への攻撃でもあった。
しかしこれは、数値(幾何学)に置き換えることの出来るものだけを基礎におき、それ以外は捨象するという、一種の観念論(形而上学)である。従ってデカルトは「数学的真理のような明晰判明な知識の確実性や真理性そのものも、実は神を創造者とする」とその究極の根拠を神とその存在証明に求めることになる。現代の中学高校の数学の中軸をなす、デカルト座標はこのようにして生まれることになる。

他方デカルトは、宇宙を創造した神が立法者として破ることを許さない掟を自然界に課したと考え、それが自然法則に他ならないと考えた。物体は能動性を剥奪されたため「運動そのものを物体が生み出すことはありえない」従って神こそが運動の第一原因であり、その神の普遍性により、いったん動かされたものは、いつまでも運動する=「運動量保存則」「慣性の法則」「直線運動」の概念が導かれる。世界は物質と運動の二つのみで説明され、幾何学的延長のもとでのみ理解される、等質の無機的宇宙とみなされることになる。
また、神が無から自然法則と物質を創造し、物質に運動を与えたということから、世界は巨大な機械になぞらえられた。神という時計細工師が材料を全てそろえ世界時計を作り、ねじを巻いて動かしているという「機械論的自然観」が必然的に導かれる。

この機械論的自然観は、遠隔作用である重力のなぞ(ニュートンは「絶対空間」の概念を提起し、空間は「神の本質的属性」としてとらえることで論理の矛盾を解消し、重力を説明しようとした)を残しながらその適用範囲を拡張していく。
熱現象はミクロな分子運動の力学的結果として扱われ、電磁気学は絶対空間に代わる「電磁場」の概念により、ベクトル場での数学的法則の形で、定式化される。発展の遅れていた化け学についてもドルトンによる原子論を』媒介にして物理化学が成立し、生物学も核酸(DNA)の2重螺旋モデルによって機械論的な世界に組み込まれることになり、今日に至る。

今日素粒子の世界では時空の4次元空間を超え、11次元空間を要請する理論も提起されている。現在の科学は自然界に存在する法則を数学的に読み解くという関係さえ逆転し、数学的法則によって自然界を読み取るという倒錯した関係に完全に変貌しつつある。
このことに違和感を覚えると同時に、西洋科学の停滞の要因を直観する。
しかしそれは 「幾何学的延長そのものが物体の本性を形成する」という相当に偏った自然観・物質観の必然でもあるように思う。

参考『科学史から見る近代』高橋秀裕
 
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