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経済破局は来るのか?
341392 米中貿易摩擦は世界経済危機をもたらすか
 
匿名希望 18/12/05 PM07 【印刷用へ
吉田繁治氏 ビジネス知識源397号:早くもグローバル・サプライチェーンの変調が現れた リンク 
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ブエノスアイレスのG20でトランプ大統領は、条件付きの「追加関税」の3か月猶予で、中国側と合意しています(現地時間:12月2日)。課税品目を拡大して税率を10%から25%に上げることの3か月引き延ばしです。その間に中国に、構造改革での合意を迫るという。

2020年の大統領選での再選を目的にしたトランプ関税のため、グローバル経済の収縮が生じ始めました。GM(ゼネラル・モーターズ)は、北米の5工場を閉鎖し、1万4000人の雇用をカットする発表をしています。

1990年代から世界の製造業は、適地調達の「グローバル・サプライチェーン」の生産構造になってきました。GDPでは200兆円になる自動車工業はその代表です。
世界の生産台数は9700万台です(2017年)。中国が2900万台(構成比30%)とダントツに多い。米国1100万台(同11%)、日本969万台(同10%)、ドイツ564万台(6%)です。
中国の生産は米国、日本、ドイツの合計台数を上回っています。国内の需要も3000万台と、日本の6倍も大きいからです(日本の需要は517万台:2018年)。中国は米国車に対し25%の報復関税を課しています。

GMは海外から鋼材(鉄板)を輸入し、日本などからは部品を調達して、やはり日本から輸入したロボットで組み立て、生産と販売しています。部品メーカーは、3700社という。網の目のような調達のチェーンです。
トランプが、誤って前提にしている一国生産は、1970年代に終わったのです。
グローバル・サプライチェーンへの進行の認識を誤っているトランプは、まず、アルミと鉄鋼に対し、10%と25%の関税を課しました(大統領令:2018年8月〜)。主な標的は中国になっています。
アルミと鉄鋼は、空洞化していたラスト・べルト(米国の、工場が錆び付いた工業地帯)の雇用を回復して、米国の所得を増やして、トランプ支持を高めることを目的とするものです。
海外の部材と部品に10%から25%の関税をかけると、輸入して組み立ているGMの生産コストは上がります。販売価格を上げるともともと競争力が低いGMの車は売れなくなるので、コストカットという対策をとったのです。
これが北米の、5つの工場の閉鎖と1万4000人のリストラでした。

トランプ関税の影響は、GMのリストラにとどまる訳がない。試算では、今後、アルミと鉄鋼の課税により原材料価格の上昇のため、米国の加工工場が価格競争力を失って、47万人の雇用が失われるという。

1980年代ドル高の40年前から、空洞化してしまった米国のアルミと鉄鋼の、コスト競争力の低い工場が、新たに建設されて雇用を生むことはない。トランプは、国内雇用の確保として、何をどう考えていたのでしょう。1970年代までの一国生産モデルと見ていたのでしょう。
価格競争力のある米国農業は、中国の報復関税(米国からの輸入12兆円分が対象:18年9月24日発動)の25%で、輸出を減らします。トランプ関税はブーメランのように、中国からの米国への関税になっています。この面でも、雇用の喪失があります。
米国は、中国からの全輸入(約50兆円)の半分である25兆円分の品目に課税しますが、中国は米国からの輸入の12兆円分に対して報復関税の措置をとったからです。家畜の飼料になるトウモロコシの米国からの輸入は、18年9月には98%も減っています。
トランプ関税の影響は、2018年末から2019年にかけて大きくなって行くでしょう。


世界経済の実質GDPの成長は、2003年から2007年は、生産のグローバル化から、5%台と高かった。2009年は、リーマン危機(金融収縮の危機)から0%に急落し、2010年からは、世界の金融緩和で3.5%〜4%に回復。2014年以降は、3.2%〜3.6%の成長があり、2018年は3.7%、19年も3.7%と、若干高まると予想されていました。

リーマン危機の後は、対米・対欧輸出が減った日本が実質GDPでマイナス5.5%、輸出経済のドイツがマイナス5.6%と減少の幅がもっとも大きかった。
中国も、対米・対欧での輸出減になりましたが、人民銀行が4.5兆元(72兆円)の増札をし、政府の公共事業と、国有企業による住宅建設投資を行ったため、逆に10.6%という高いGDP成長率でした(2009年)。
資金量がもっとも多い米国発の金融危機によって、世界恐慌になる恐れがあった世界経済は米国、ユーロ、日本、中国の中央銀行による合計$12兆(1320兆円)通貨の増刷と、金利をゼロ%に下げる、世界史上初めての金融緩和により救われています。

リーマン危機のとき、米国ダウは6500ドル台へと50%、日経平均は8000円台に40%下がっていることは、危機の下落幅として記憶に値します。現在のダウは、2万4784ドルで約3倍、日経平均は2万2177円であり、2.7倍に上がった水準です(18年11月28日)。

IMFは、3.9%と高く見ていた2019年の世界GDPの成長を、貿易摩擦と金融引き締めにより、3.7%へと0.2ポイント引き下げています。しかしこの予想は、トランプ関税と中国の対米報復税の、時間をおいた波及を、低くしか見ていません。2019年を通じてトランプ関税が25%に強化されて、中国からの全輸入に拡大されると、小さくても1ポイントは下がるでしょう。1.5ポイントかも知れない。

もっとも影響を受ける中国のGDPの成長率は、現在の予想の6.3%から5%台(または4%台)に下げるかも知れません。FRBが2019年に予定するという3回の利上げ(経済は需要と投資の引き締めなる)と、中国の全品目に対して25%の関税が課された場合です。
中国にとっての4%台の成長は失業を増やします。社会保障が整備されていないので、ホームレスのような都市流民になった失業者は、「暴動」を生みます。
報じられない騒乱は、年間20万件ともいう。規模は、数十人から数万人のデモや暴動です。多くが、農村を捨て、農民工になった下層の労働者です。
 
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