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古代市場と近代市場
339895 日本の古代市場
 
北村浩司 ( 壮年 滋賀 広報 ) 18/10/11 AM00 【印刷用へ
【古墳時代(6世紀頃)】
この時期の市は、特定の日時(主として農事の始まる春先と収穫の秋)に開催され、物資交換の実利だけでなく、従来の贈与と返礼による友好・社交とは未分化で、祭祀・会合(情報交換)・歌垣(特定の日時・場所に老若男女が集会・共同飲食し、求愛の歌舞を掛け合う行事、それ以前は男女の性的交歓の場でもあった)等と一体化していた。
 古墳期には神へ奉納する物品でもあった米(主に列島西部)や絹・布(主に列島東部)等を物々交換の価値尺度としていたようだ。
  市は河原・中州や浜・山の入り口となる坂等、人々の居住地域から少し外れ、日常生活と切り離された、聖なる場と俗なる場の境界とされる場所で、仮設的・一時的に執り行われていた。このような場所が選ばれたのは、人には血縁・地縁等の結束力が、物には生産者や使用者の精力が注入されており、交換のためにはそれらの力を除く必要があり、境界ではそれらの力が減衰すると信仰されていたからである。そしてさらに、その力を除去するには、神の霊力を発揮させるための祭儀が不可欠なうえ、神に奉仕する人々が取引を仲介することが必要であった。
 また古代からの「虹の立つところに市を立てなければならないという慣行」が全国各地に伝承されている。虹は天界と俗界を結ぶ橋と考えられており、虹が立てばその橋を渡って神や精霊が降りてくると信じられていた。その神迎えの行事こそが市であり交換であると位置付けされていた。
このように市は超越的な空間、或いは聖的な場であった。従って当時は、神の代理人とされたである首長に、貢納された物品が集積されていたこともあって、必然的に首長が場を取り仕切ることになる。
また市は俗界の関係を超越する場(無縁所)として位置づけられていたので、罪を負った人も市の場では追及を行わないという規範があった。ケンカや口論、押売押買、債権取り立ても後の時代も含めて固く禁じられている。仮に揉め事があってもその場限りで解決し、俗界へ持ち越さないという規範である。

【奈良・平安時代前期】  
この慣習は中央集権の国家体制を確立するうえで受け継がれ、市は天の神の子孫である天皇(朝廷)が統制するのものとされ、諸国各地で定期的に立つ市は、国家が公認するとともに、指定の場以外の市は禁止されていた。
都城(平城京・平安京等)では、朝廷が統制する東西の市が設置され、主に皇族・貴族や朝廷・寺社等が利用し、正午に開き、日没に閉じ、物資の単位・価格等は監督官庁(市司/いちのつかさ)が管理していた。価格は全て市司が物品ごとに一定額を決定していたのである。
また古代の不定期な市を引き継いだ物として、河原や峠や坂に代わって、俗界から超越した場所として、奈良の三輪大社や難波の住吉大社などでも開催された。また、この神聖性を引き継ぐ場所として寺の縁日や寺の門前でも市は開催されるようになり、後の門前町に引き継がれている。仏教の教義とも相まって寺が無縁所であるというされたことは、寺社勢力の力を統制しようとした江戸時代に至っても、寺に駆け込めば離縁が出来るという「駆け込み寺」の風習としてなお残存している。

【平安時代後期から鎌倉時代】
かつての商人は、神仏に奉仕する人々だったが、この時期の商人は、朝廷(天皇・貴族)や寺社等の権威に帰属し、かれらに貢納することを条件に、自由に歩き回り、商売を独占できる身分・特権を授与され、市を管理・運営する専任者は、商業から金融・流通業(廻船・問丸)にも進出していく。
 また、手工業民(職人)や芸能民は、それまでは朝廷が保護していたが、財政悪化のため、かれらを放出したので、独自に集団で活動するようになり、平安末期から商工業・芸能の人々は同業組合(座)を結成しはじめる。
  各地の定期市では、行商人だけでなく、自分で製作した商品を売り歩く手工業民や、芸農民が活動し、平安後期には、商品(物々)交換が飛躍的に発達した。
 当時は政府発行の貨幣もあまり流通しておらず、西日本では米が価値尺度になっており、平安末期には現物の米を移動させず、手形(替米/かえまい)で取引される一方、東日本では絹や布が価値尺度になっている。平氏が日宋貿易を推進して以降は、宋銭が流入したが、疫病が流行すると、銭貨使用がもたらした病気であるという噂が立ち、主要都市にしか浸透しなかった。そこにはまだ貨幣は呪物だという意識があったからだ。
この時期京都の淀、山崎、大阪の堺、近江の堅田、伊勢の桑名などにも市が開設されるが、戦国時代に自治都市として発展したこれらの都市は、かつて古代の河原や浜、中州や境に立った市の伝統を汲む町である。

参考:「古代の市について」 上原利貫
   「無縁概念と市場の成立」 二瓶喜博
 
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