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経済破局は来るのか?
339883 ドル・トラップ(ドルの罠)にかかった日本
 
匿名希望 18/10/10 PM07 【印刷用へ
吉田繁治氏 ビジネス知識源 391号:中国経済と人民元が向かうところ(1)
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■ドル・トラップ(ドルの罠)にかかった日本

2000年にユーロを作ってドル基軸圏から離脱したドイツと違い、日本は「ドル・トラップ」にかかっているからでしょう。
ソ連崩壊後の1990年に、東西ドイツを統一したドイツが、10年計画で慎重にユーロ圏を主導して作ったのは(2000年)、世界に対する貿易黒字によってドルが貯まり、そのドルは、祖国である米国の経常収支の構造的な赤字のため、長期的には下落し、今後も下がるからです。
わが国では、「米国との貿易はともかく、中国との貿易になぜドルが必要か」という疑問を呈する人は、見当たりません。
エコノミストは「ドル以外に代わりがない」とするだけで、基軸通貨はどうあるべきかを論じません。

【対外資産1012兆円】
日本にはドルの行く末を懐疑する思考がないため、対外資産を1012兆円(9.2兆ドル)に増やしたのです(2017年末:財務省)。輸出企業の工場と株式の直接投資は、174兆円(構成比17%)と少ない。官民の金融機関・政府・企業・個人がもつ、外貨建て金融資産が838兆円(同83%)です。「なぜドルの金融資産をもつ必要があるのか」を問う人はマレです。

【対外純資産329兆円】
海外から日本に投資された、日本にとっての対外負債は、683兆円です。直接投資は28兆円(構成比4%)しかない。海外からの日本への工場、商店、資本への投資は少ないのです。ウォルマートも、西友から引きました。他に円建ての金融商品(証券、株式、デリバティブなどの)が660兆円(同96%)です。
日本は、対外資産が1012兆円(所有者は、金融機関、政府、企業、個人)で対外負債は683兆円であり、負債を引いた対外純資産が329兆円です。ドイツ・中国・スイスを超えて、断然世界1です。(注)対外純負債国は、1位米国、2位英国です。
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わが国の対外資産が巨額に貯まった理由は、貿易収支と投資利益(所得収支)の合計である経常収支の、1981年からの「構造的な黒字(ドルの超過受け取り)」分で、ほぼ全額、ドル建ての金融商品を買ってきたからです。
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【ドル安の時の金融危機】
基軸通貨である米ドルに偏った対外資産の問題は、ドルが下落(または暴落)したとき、激しく現れます。ドル建て資産は、65%〜70%、ユーロ建てが15%〜20%です(財務省は、なぜかこれを公表しません)。ドルが大きく下落したときは、ユーロを買っているのがドルなので、時期のズレはあってもユーロもほぼ同じ率、下落します。(ドル・ユーロ)安→円高になるのです。
「ドル高・円安」のときは、日本には、逆の為替利益が出ます。これが、日本が「円安/ドル高」を歓迎する根底の理由です。2011年末から、異次元緩和400兆円の円増発がもたらした円安(80円→110円台)で円は40%近く下がり、ドルは40%上がりました。
アベノミクスのドル高(円安)は、円に対し5年で累計300兆円の為替利益を金融機関・企業・政府にもたらし、「株価上昇(時価総額(678兆円:資産バブルの1989年より多い)」の原因になったのです。これと逆のことが起こるのが、ドル安(円高)のときです。

●対外資産を大きく貯めた経常収支の黒字国が、自国通貨の下落を歓迎して、ドルの上昇を願うのが「ドル・トラップ(ドルの罠)」です。

【20%のドル安でも、日本は、金融危機から財政破産になる】
20%のドル下落になると、日本は1012兆円の為替差損を蒙ります。その時、米国の金利も上がるので、米国株も20%以上下落します。
対外資産をもつ日本(多い順に金融機関、政府、企業、個人)が300兆円近い損失を抱えるでしょう。300兆円の損は、日本に「ドルバブル崩壊後の金融危機」を生むのに余りある損害です。「ドルが不良債権化」することと同じです。
1012兆円の対外資産が20%減って円では808兆円になり、204兆円が蒸発するのは、日本にとっては、「ドル安がもたらす不良債権」に相当します。
こうなると銀行は、表面化した損失(資産の減少)から、円国債が買えなくなり、国内要因で金利が上がり、国債価格は下がって、政府の財政破産の、きっかけになります。今後のドル危機は、国債発行に頼っている日本の財政も破産させます。
対外負債は、日本の株や債券を海外(主は英米のファンド)が買ったものです。これは円建てです。ドルが下落しても、円での金額は同じです。日本にとってドル安(円高)では、対外資産だけが減ります。

ドルが40%下げれば(1ドル=68円)、対外資産が1/2に減る日本は、対外純債務国に転落します。代わりに、米国が対外純債権国に浮上するのです。
対外資産を大きく超過させている日本(対外純資産329兆円)は、20%のドル安で、一方的に、対外純資産のほぼ全額(329兆円)を失います。

1985年の「プラサ合意での1/2へのドル安」でも、対外資産での為替差損が起こりました。しかし33年前は対外資産の金額が小さかったので、問題になりませんでした。もっぱら、当年度輸出の減少という問題だったのです。
日本の経常収支が構造的な黒字になったのは、第二次石油危機のあと、FRB議長ボルカーの20%への利上げでドルが高騰し(1ドル=250円)、米国製造業が空洞化した1981年以降だったからです。
20%のドル安とは20%の円高であり、18年10月3日では1ドル113.6円のドルが、90.9円に下がることです。

●米国の対外負債が、2017年の38兆ドルから40兆ドルに向かって、毎年約1兆ドルも増え続ける数年後を見渡せば、十分な可能性があることです。
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340041 トランプの過剰な「中国いじめ」で米株急落へ その@ takigawa hayami 18/10/16 PM07

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